2016年12月15日

ウゴルスキのメシアン:鳥のカタログ


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第2次大戦後の現代音楽のビッグ・ネームと言えば西側諸国の双璧がフランスのメシアンとアメリカのケージであり、それに東側陣営ではロシアのショスタコーヴィチであった。

メシアンはカトリックの立場から「普遍」の美を求め、数多くの神学的で形而上的なメッセージを持った音楽の他に、時には「音価と強度のモード」のような抽象的なシステマティックな作品も書いた。

しかし最もユニークであったのは、普遍的な音楽の現象、あるいは神の音楽として鳥の歌に素材を得た一連の作品であろう。

メシアンによれば、鳥たちはわれわれの遊星上に存在するおそらく最大の音楽家ということになるが、《鳥のカタログ》はフランス各地の77種の鳥の歌をそれを取り巻く時空間とともに音楽化した約3時間にも及ぼうというメシアンの超大作である。

《幼子イエスに注ぐ20のまなざし》もそうであったが、決して耳当たりのいい作品ではなく、弾き手はもちろんのこと、聴き手にも相当な緊張を強いる難解な作品である。

ただ、《幼子イエスに注ぐ20のまなざし》が、どちらかと言うと人間の深層心理を抉っていくような峻厳な作品であるのに対して、《鳥のカタログ》は、ひたすら自然を描いて行くという温かい姿勢が窺える。

したがって、わずかな違いではあるが、《鳥のカタログ》の方が、幾分安心して聴くことができると言えるのかもしれない。

ピアノのための記念碑的な大作であり、この作品群に魅せられたウゴルスキの迫真の演奏も前人未踏の域に立つものと言えるところであり、鳥の歌を通して雄大な自然の実相に迫るようなピアノが聴けよう。

ウゴルスキはレニングラード音楽院在学中より、メシアンやウェーベルン、アイスラーなどのソ連初演を行なっていたし、卒業後の最初のリサイタルからシェーンベルクやブーレーズなど、当時としては急進的なプログラムを組むなど、意欲的な演奏活動をしていたのが災いして、当局より「破壊活動分子」のレッテルを貼られ、ドサまわりを余儀なくされた過去がある。

つまり、ウゴルスキは筋金入りの現代物好きで、この《鳥のカタログ》は、そんな彼に「これこそ私そのものだ」と直観させたのだという。

77種にも及ぶ鳥の鳴き声を素材に使ったマニアックな未曾有のピアノ音楽である本曲は、超絶的なテクニックと綿密な“読み”に裏打ちされた正確な表現力が要求されるが、ウゴルスキの演奏はそれらを鮮やかにクリアするばかりか、あたかも音楽の根源的な流れに共鳴するかのごとく、喜々として精緻かつ実にこなれた表現で肉薄している。

現代でも屈指のヴィルトゥオーゾと呼べる資質と明晰な解釈、そして何よりも完全に本曲を消化し自らも感応し得る表現の秀抜さに驚かされる。

この新たな切り口とゾクゾクさせる刺激を与えてくれるところに、彼の魅力があり、唯一無二の個性を持つピアニストと言って良いだろう。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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