2016年12月18日

ゼルキンのモーツァルト:ピアノ協奏曲第27番(オーマンディ)、第12番(シュナイダー)/バルトーク:ピアノ協奏曲第1番(セル)


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チェコ・プラガからのレギュラー・フォーマットによるジェニュイン・ステレオ・ラブ・シリーズの1枚で、新規にリマスタリングされた瑞々しい音質が1960年代初期のゼルキン円熟期の至芸を甦らせている。

このシリーズに使われている音原の中でもライヴ録音には保存状態の良好で貴重なものが多く、チェコの最新のリマスタリング技術が活かされて同音源でも他のレーベルのCDと聴き比べると大概こちらの方に分がある。

このディスクでもその音質の艶やかさと臨場感に驚かされるが、これは古い音源でもまだリマスタリングによってグレード・アップの余地があることを証明している。

学者然とした風貌のピアノの大家ルドルフ・ゼルキンは1903年生まれで、同じく米国を拠点として華麗きわまる活動をしたルービンシュタインとは一回り以上も違うが、かのホロヴィッツとは1才上、同年輩である。

モーツァルトの2曲のピアノ協奏曲の演奏は全く自然体だが、一切の無駄を省いた本質的で密度の高い音楽性がモーツァルトの作品に備わっている奇跡的な幸福感を感じさせてくれる。

ゼルキンはボヘミア出身だがウィーンで正式な音楽教育を受けたことから、彼にとってモーツァルトの演奏は故郷へ帰るような親しみがあったのだろう。

このモーツァルトはひとつの典型だが、山っ気、洒落っ気といったものを少しも感じさせず、生真面目で実直な演奏スタイルを貫いている。

特に、第27番は一流ピアニストの新盤が次から次に投入される最激戦区だが、ゼルキン盤は1962年の録音ながら半世紀以上を経て、いまなお根強い支持があるのは、細部へのきちっとした目配り、全体としての整然さに加えて、愚直なまでのひた向きさを感じさせるからではないだろうか。

その高い集中度の一端は、ゼルキンの低い唸り声(グールドばかりではない!)がバックにかすかに聴き取れることからもわかる。

また第12番はマールボロ音楽祭における貴重なライヴ盤であるが、ソロと指揮者の間の打てば響くような巧みなやりとりやオーケストラとの調和と安定感も秀逸だ。

彼は若くしてヴァイオリニスト、アドルフ・ブッシュの伴奏者として、またブッシュ四重奏団の共演者として長く演奏活動を続けたアンサンブル・ピアニストでもあったことから、こうした模範的な合わせ技が鍛えられたのだろう。

バルトークのピアノ協奏曲では、その野趣溢れる曲想から演奏者が渾身の力を振り絞ったような熱演が多い中で、ゼルキンはそうした演奏とは対極的に力ではなく持続する緊張感でこの作品を再現することで、かえってバルトークの音楽から噴出されるエネルギッシュな性格の表出に成功している。

こう言っては失礼だが、ライナー・ノーツの表紙に掲載されている写真のピアニストが演奏しているとは到底想像できないパワーを秘めている。

しかしそれが本来のテクニックというものだろうし、指揮者ジョージ・セルの研ぎ澄まされた感性から導かれる精緻なオーケストラと相俟って、両者が鮮烈なサウンドを創造してこの曲に一層充実感を与えている。

セル&コロンビア響の追走はゼルキンとひたと一致しており整然さがさらに際立つ。

この見事な演奏はハンガリー出身指揮者セルによる故国の作曲家バルトークへの強い思い入れがあるからかも知れない。

ちなみに、セルとゼルキンは、作曲家シェーンベルクでの若き修行時代の相弟子である。

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classicalmusic at 00:31コメント(0)トラックバック(0)ゼルキン | セル 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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