2016年12月30日

ハイティンク&コンセルトヘボウのシューマン:交響曲全集


この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。



シューマンの交響曲全集で誰のものを選ぶのかときかれると、すごく迷う。

大御所クレンペラーのものは、1960年2月の第4番から1969年2月の第3番までじつに9年間をかけた労作だが、1曲1曲を録音していったら「全集」になったと言ったほうが正しいのかもしれない。

ゆえに、年代を追うに従って指揮者やオケに変化が生じてしまっている。

サヴァリッシュのものは、当時のシュターツカペレ・ドレスデンのあまりのすばらしさ(特にティンパニのゾンダーマン!)に驚嘆するが、この世界最古の由緒ある楽団の魅力が指揮者の魅力を上回っているとも言えなくない…。

そこで今回取り上げるのは、アムステルダム生まれのハイティンクが、自ら四半世紀も統率した名門コンセルトヘボウ管弦楽団を指揮したものだ。

ハイティンクは、作品に真正面から向き合い、まとまりの良い端正な音楽を、柔らかみのある美しい響きでたっぷりと鳴り響かせて、その魅力をストレートに引き出してくる指揮者だ。

こうしたアプローチを「個性がなく」「平凡」と言ってしまうことも可能だろうが、彼において確実に「非凡」なのは、オーケストラの響きを練り上げ、アンサンブルを見事にまとめあげていく能力である。

この非凡さが、「平凡」な解釈を、小手先の細工を弄したり斜に構えてみたりといった幾多の一見「個性的」な解釈よりも、はるかに説得力のあるものに変えるのだ。

シューマン独特の夢見るようなオーケストレーションを流麗に再現しながら、どこをとっても奇を衒わぬストレートな解釈で、それが聴き手に強い説得力をもって迫ってくる。

ハイティンクは全集の多い指揮者の1人だが、それは時代や作曲家にかかわらず、手掛ける作品のすべてにおいて均質で高い水準の演奏を成し得る指揮者だからだろう。

そして長年の経験のもとに1980年代に入って意欲を燃やしたのがシューマンの交響曲であったが、当時のハイティンクの気宇の大きさと音楽的な成熟を反映して、シューマン特有のオーケストレーションから豊麗な音楽を引き出している。

こうして完成された全集は、4曲すべてがハイティンクらしい無理のない妥当な表現の中に濃やかで精密な表情を盛り込み、コンセルトヘボウ管の伝統的な、ほの暗い響きと渋みのある重厚な響きを生かして、それぞれの作品の持ち味を伝えており、一方で軽やかな推進力をもって、新鮮な音楽を聴かせる。

この演奏は全4曲のすべての出来映えにまったくむらがなく、作品の本質に触れており、解釈も誠実この上ない、いずれ劣らぬ名演となっている。

結果的に第1番の若々しいロマン的情緒や、第2番の深々とした叙情の変転、第3番の明るい輝きに満ちた力感の表明、第4番の内向する幻想の広がりと、それぞれの曲の性格が見事に明らかにされていて、現在の最良の全集である。

ピリオド楽器による演奏を聴き慣れた耳には、響きがやや厚くなり過ぎる傾向もあるが、基本的には柔らかく豊かな表現で落ち着いた音楽作りをしており、また、細かい動機まで、明確に聴取できる明晰さも持ち合わせていて、安心して楽しめる内容を持っている。

第1番《春》は、明るく明晰な表現でこの交響曲にある優美な快活さと若々しくフレッシュな感覚をバランス良く的確に表出し、また立体的に構成しながら、その中にシューマンの若々しいロマンティシズムが横溢しており、爽やかでありながらぬくもりのある表情が印象的である。

冒頭から抜けの良い響きで、明るく力強いが、序奏に続く第1楽章主部は速めのきびきびしたテンポで覇気を感じさせる。

一方緩徐楽章にはほの暗く物憂い雰囲気もあり、終楽章は落ち着きのあるテンポをとりながらも、生き生きとしている。

第2番は第4番とともに、最もシューマンの音楽性を鮮明に表出した曲と言えるが、その個性的な楽想と構造をハイティンクは明晰に処理しながら、作品に潜む深沈とした叙情の変転をくまなくあらわしているのが良く、流麗さにおいても際立ち、きわめて洗練された演奏である。

落ち着いて安定感があり、流れが良く、緩徐楽章にも深みのある温かい情感が漂っていて、この指揮者らしい誠実さが、こうした作品では格別の長所になっており、オーケストラの統率についても言うことがない。

第3番《ライン》は、明るく明確、そして流麗な旋律美に溢れた表現で非常に中身の濃い演奏になっていて、相変わらず堅実無比の好演である。

オーケストラを存分に鳴らしながらゆとりある美しい響きを作り出し、起伏に富んだ演奏を聴かせ、個々の部分の造型よりも全体のまとまりある構築を考えたオーソドックスな演奏で充実感がある。

この曲に必要な明るい輝きもあって、作品の特色を明らかにしており、生き生きと表現された第1楽章や壮麗な気分を格調高く歌い上げた第4楽章などに、地味ながらめきめき力をつけていった実力派の巨匠の音楽的成熟が窺われる。

第4番は、豊かな響きと明晰な声部処理でまとめあげるなど、造型的な配慮が行き届いているのが良く、幻想的な趣と劇性の配分も聴き手を納得させるのに充分で、この作品を知るためには最良の演奏である。

ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング



フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室



classicalmusic at 00:07コメント(0)トラックバック(0)シューマン | ハイティンク 

トラックバックURL

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
メルマガ登録・解除
 

Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

Categories
Archives
Recent Comments
記事検索
  • ライブドアブログ