2017年01月14日
マルティノンのドビュッシー&ラヴェル:管弦楽作品集
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ジャン・マルティノンは晩年自国のフランス音楽の録音に精力的に取り組んだ。
中でも最も評価の高いものがこの8枚のCDに収められたドビュッシーとラヴェルのオーケストラル・ワーク集である。
EMIクラシック・バジェット・シリーズのひとつで、一応今回も限定盤になっているが、既に2002年にリリースされたものと全く同一内容の約10年ぶりのリニューアル盤になる。
またこのうち1974年に録音された4枚のドビュッシーはオランダ・ブリリアントからもライセンス・リイシュー盤としても出ているし、日本盤としては独自のリマスタリング盤やSACD仕様もあり、カスタマーの選択にもバラエティーに富んだ名盤だ。
一方1975年の録音になる4枚のラヴェルのうち、チッコリーニのソロによる『ピアノ協奏曲ト長調』及び『左手のための協奏曲』と、パールマンをソロ・ヴァイオリンに迎えた『ツィガーヌ』の3曲を除いた3枚はEMIから別途にリリースされている。
ドビュッシーとラヴェルの音楽はマルティノンより5歳ほど年上のクリュイタンスの演奏を聴き逃すわけにはいかないが、残念ながら全盛期に亡くなったクリュイタンスはラヴェルはともかくとして、ドビュッシーの作品の録音はごく僅かしか残さなかった。
それに反してマルティノンはこの2人の作曲家を充分に堪能させてくれるだけの質と量のセッションを積極的にこなした。
フランス国立放送管弦楽団とパリ管弦楽団のふたつのオーケストラも巧みに統制されていて、パリ音楽院管弦楽団のようなスタンド・プレー的な面白みは影を潜めたが、どちらもフランスのオーケストラのお家芸である柔軟で陰影に富んだ暖かい音色と機動力も備えた、現在では殆んど求められなくなってしまった独自の持ち味を残している。
この時期のマルティノンのフランス音楽に対する情熱は、幸いサン=サーンスの交響曲全集を始めとしてベルリオーズ、デュカス、イベール、オネゲルなどのオーケストラル・ワークの録音という形で実を結んだ。
録音時のバランス・エンジニアは殆んどポール・ヴァヴァシュールが担当していて、それが如何にもフランス趣味を象徴していて興味深い。
筆者はつい最近までこの録音方法はEMIの技術陣と録音機器の欠点のように思っていたが、フランスものに関しては考えを変えざるを得なくなった。
特にドビュッシーの音楽ではこうしたオフ・マイクで得られる独特の空間と、透明に醸し出され混交される色彩感にヴァヴァシュールのポリシーが体現されているように思えるからだ。
尚11ページほどのライナー・ノーツにはマルティノンのキャリアが英、独、仏語で掲載されているが、曲目と録音に関するデータはそれぞれの紙ジャケットとボックスの裏面のみに印刷されている。
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