2017年01月16日
マルティノン&フランス国立放送管のサン=サーンス:交響曲全集
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ジャン・マルティノンは60代になってから精力的にフランス物の録音に取り組んだ。
それらはベルリオーズ、ドビュッシー、ラヴェル、オネゲル、デュカスなど枚挙に暇がないくらいだが、このサン=サーンス交響曲全集も同時期、つまり1970年代のセッションで、それら総てが高い水準を維持している。
マルティノン自身、彼の円熟期の総決算として自国の作品に全力を注ぎ込んでいたに違いない。
そして奇しくも彼は1976年に他界している。
彼は高度な音色のブレンド・テクニックを使ってフランス国立放送管弦楽団から暖色系の繊細な音響を引き出している。
ドイツ系の指揮者であればもっと古典的な造形美を強調するだろうが、マルティノンの感性で捉えた解釈でスコアを読み取る柔軟なアプローチが彼らの演奏に特有の軽快さを与え、曲想に推進力を持たせているのも特徴的だ。
第3番『オルガン付』でも彼は決して稀有な大音響を作り上げようとしたのではなく、音楽自体が内包するエネルギーを解放する形で力みのない、しかし華麗な音楽を描き出している。
録音状態についてだが、この時期のEMIの特徴はオフ・マイクで採るホールの残響重視の方法で、当初筆者は中音に乏しく臨場感に欠ける録音上の欠点のように思っていたし、過去のレビューでもそう書いてきた。
しかし最近になってこの執拗とも言える録音方法を採用していたバランス・エンジニア、ポール・ヴァヴァシュールの確固たる哲学であったことが理解できるようになった。
特に音の陰影やその微妙な混交を考慮して作曲されたロマン派以降のフランスの管弦楽曲では、あくまでも鮮明な音質の追究という他のレーベルとは対極的な選択をしていたのではないだろうか。
つまりそれはそれぞれの楽器の音色を鮮明に拾うことではなく、複数の楽器の音色がミックスされた効果をホールの響きとして採りいれるという意味でのことだ。
フランス人の好む趣味を自分なりに想像するならば、一切を明るみに晒してしまうような方法は、むしろ品のないやり方で受け入れられなかったのかも知れない。
少なくとも一概にEMIが技術面で他社に大きく遅れをとっていたと決め付けるわけにはいかないだろう。
サン=サーンスの初期の交響曲を聴いていると、彼がいかに熱心な古典派の信望者だったかが理解できる。
そこにはハイドン、モーツァルトそしてとりわけベートーヴェンからの影響が濃厚に聴き取れる。
しかし曲調はあくまで明るく屈託のないところがいかにもフランスの作曲家らしい。
収録曲は番号付の3曲とイ長調及びヘ長調『ウルブス・ローマ』の5曲で、未完の作品を除く総ての交響曲を網羅している。
録音は1972年〜75年で演奏は総てジャン・マルティノン指揮、フランス国立放送管弦楽団。
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