2017年01月18日

チョン・ミュンフン&パリ・バスティーユ管のメシアン:トゥーランガリラ交響曲


この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。



チョン・ミュンフン(1953−)が1989年から94年まで音楽監督を務めたパリ・バスティーユ管弦楽団との初録音で、ドイツ・グラモフォン(DG)へのデビュー盤(1990年10月録音)。

就任から1年半余り経過したミュンフンの実力を世界中に知らしめた記念碑的なアルバムともなった。

このコンビの実力を知るためには恰好の1枚で、ミュンフンは、パリ・オペラ座の音楽監督就任とともにオーケストラの改革に乗り出し、パリ・オペラ座管弦楽団の演奏水準を著しく引き上げ(この頃、オーボエのルールーやフルートのカンタンが首席奏者として活躍)、ほとんど生まれ変わったと言えるほどの変化を遂げ、オペラだけでなく、シンフォニックなレパートリーにも取り組んでいった。

晩年のメシアンが当時準備していた《トゥーランガリラ交響曲》の新ヴァージョンのための種々の修正を考慮に入れた改訂版に基づく演奏で(既に日本でも1994年に大野和士&東京フィルの演奏で用いられた)、作曲者立ち会いのもとの試し刷り的な録音とも言えるが、作曲家自身も絶賛し、大いに満足したと伝えられる名演である。

と言っても、ダイナミクスを細かく変更したり、書き加えた程度で、楽譜を根本的に書き換えたわけではなく、聴いてわかる大きな変更はない。

おそらく作曲家の意図をよく知っているロリオ姉妹以外のソリストに委ねられてもきちんと作品の輪郭が伝えられるよう、指示を増やしたのだろう。

それよりも全体に作曲者指示のやや速めのテンポによりきりっと全体をまとめていくミュンフンの颯爽とした指揮と、俊敏且つ機敏なオーケストラのレスポンスが生きた快演で、着実で強靭、この大曲に正面から取り組み、音楽に内在する劇性を鮮やかに表出し、実に充実した演奏を繰り広げている。

その特質は、この作品を“見えない潜在的なオペラ”として捉え、全10楽章のドラマ性を強調している点にある。

例えば第5楽章は、速めのテンポと明確なリズムによって星たちの喜びの音楽となっており、控え目な第6楽章と見事なコントラストを見せている。

豊麗なオーケストレーションゆえの重厚なヴォリューム感を楯に押しまくるタイプの演奏とは本質的に違い、各声部をバランスよく立ち上がらせ、精妙に響かせる。

楽器間のバランス、テンポ、ダイナミクスも最適で、明るい音色、精妙な響き、鮮明でこまやかな造形、それでいて、感情的なニュアンスのつけ方もきめの細かさが際立っている。

しかし、もっと凄いのは、決して濁った響きにならず、メシアンの幻想的なエロティシズムを大らかに歌い上げているところで、例えば「愛の眠りの園」などは、パリ・バスティーユ管の色彩的な響きを生かした、神秘的で艶めかしい解釈となっている。

独奏のロリオ姉妹は初演から何回となく組んできたコンビであり、初期に比べると、はるかに落ち着いた演奏と言って良いだろう。

情熱的な名演も捨て難いが、これはミュンフンの知的な解釈が光った、作曲者が思い描いた理想的な演奏として銘記すべき代表盤のひとつである。

ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング



フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室



classicalmusic at 00:43コメント(0)トラックバック(0)メシアン  

トラックバックURL

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
メルマガ登録・解除
 

Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

Categories
Archives
Recent Comments
記事検索
  • ライブドアブログ