2017年01月24日

R.シュトラウス生誕150周年記念企画第1巻(ケンペ&シュターツカペレ・ドレスデン)


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名匠ケンペが晩年にドレスデンに里帰りをして完成したR.シュトラウスの管弦楽作品集は、ケンペ&シュターツカペレ・ドレスデンの代表的録音であるばかりか、ケンペの全ディスコグラフィの中でも頂点を極めるもので、この作曲家の17曲の作品ほとんどすべての管弦楽曲を網羅しており、しかもそれぞれが最高水準の名演として仕上げられている。

その功績の多くの部分が、この作曲家にゆかりの深いオーケストラに帰せられてよいだろうが、ケンペの質朴な音楽は作品の美をまったく虚飾なく伝える。

その意味でも類例のない全集であり、R.シュトラウスの演奏の原点を衝いた最高の成果でもある。

アンサンブルの見事さは言うまでもないが、その確かな造形が堅固で克明な音楽をつくり、R.シュトラウスの精緻を極めた書法と洗練された美学を存分に味わわせてくれる。

演奏効果を狙えばいくらでも派手にできるR.シュトラウスの交響作品を実に丹念に音楽的に演奏しながら、無理のない自然なスケール感が生み出され、しかも純粋で充実した響きの中から、指揮者とオケとが一体となった熱い情熱と作品の共感が伝わってくる。

このセットのために使用された音源は、ロンドンのEMIアビー・ロード・スタジオに眠っていた旧東ドイツ制作のオリジナル・マスター・テープで、日本では既に2012年に全3巻計10枚のシングル・レイヤーSACD化が実現している。

今回はこれにR.シュトラウスの協奏曲全曲を追加してレギュラー・フォーマット用にリマスタリングし、9枚のCDに収めてしまったところにセールス・ポイントがある。

いずれのCDも殆んど収録時間目一杯に隙間無く曲目を密集させているが、1999年にリリースされ、またブリリアント・レーベルからもリイシューされた9枚組とは同一セッションでありながら、マスター及びリマスタリングが異なっていることもあって、音場の広がりと音像の生々しさには驚かされる。

また、旧盤には組み込まれていなかったオペラ『カプリッチョ』から、ペーター・ダムのホルン・ソロによる間奏曲「月光の音楽」が加わって、よりコンプリートな作品集に仕上がっている。

協奏曲集も総て前述の東独音源からの新リマスタリング盤で、際立った音質改善を高く評価したい。

ケンペの後、やはりR.シュトラウスを得意にしていたカラヤンが1980年代にベルリン・フィルを振った交響詩集が残されていて、それはユニヴァーサルからコレクターズ・エディションとして5枚組CDで出ている。

R.シュトラウスの楽曲というと、筆者としてはどうしてもカラヤンの呪縛から逃れられないが、カラヤンの演奏だけが正解ではないはずで、別のアプローチの仕方もあってしかるべきである。

カラヤンとは正反対のオーソドックスなアプローチで、R.シュトラウスの名演を成し遂げたのはケンぺだと考えている。

それに両者はかなり異なったコンセプトで演奏しているので、その優劣を問うこと自体殆んど意味を成さないように思われる。

言ってみればカラヤンは作品の音響を極限まで洗練させて、非の打ちどころの無いような華麗でスペクタクルな一大音像絵巻を聴かせてくれる。

当時のベルリン・フィルにひしめいていたスター・プレイヤー達がそれを可能にしたと言っても過言ではないだろう。

一方ケンペのそれは本来の意味でロマンティックな解釈で、オーケストレーションの華美な効果を狙ったものというより、むしろ内側からの高揚が渦巻くような、幻想性を追った文学的な懐の深さと黒光りするような熟練がある。

それはケンペの古巣シュターツカペレ・ドレスデンだからこそ実現し得たセッションではないだろうか。

筆者はゼンパー歌劇場での実演に触れて以来、このオーケストラの虜になっている。

深くまろやかな音色と品のよい演奏スタイルは、かつて18世紀に最高度の文化を誇ったザクセンの都のオーケストラに相応しい。

しかし、ディスクでその魅力を味わうとなると納得できるものは案外少ないが、ケンペの遺したシュトラウスはその数少ない好例のひとつ。

もとより、同曲集の定番の誉れ高いものだが、オケと指揮者双方の音楽的資質が理想的に解けあった名演である。

また前述のような条件で、カラヤン盤よりこちらの方が音質的に優位に立つ結果になっている。

録音は1970年から76年にかけてシュターツカペレ・ドレスデンがレコーディング・スタジオとして使うドレスデンのルカ教会での収録になり、内部の豊麗だが決して煩わしくない残響もこうした大規模なオーケストラル・ワークを許容するだけの理想的な音響効果を醸し出している。

演奏曲目、レコーディング・データ及び演奏者名は各CDのジャケット裏面に書かれていてライナー・ノーツには掲載されていない。

尚2014年のR.シュトラウス生誕150周年記念としてワーナーからは現在までにもう2組、やはりEMI音源の10曲のオペラ全曲集22枚セットとその他の作品を集めた3枚組もリリースされている。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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