2017年01月30日

ドラティ&コンセルトヘボウのチャイコフスキー:バレエ音楽《くるみ割り人形》


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バレエ音楽に非凡な才能をみせてきた巨匠ドラティの優れた演奏で、彼のこの作品に対する自信のほどがはっきりと示された名演である。

この巨匠の3度目の全曲盤(1975年)であり、天下の銘器コンセルトヘボウ管弦楽団を指揮したこの録音は、ドラティの数多いアルバムの中でも屈指の名盤で、彼は過去の実績から言っても不思議とこのオーケストラとウマが合う。

ドラティは、ブダペストのフランツ・リスト音楽院でバルトークやコダーイに作曲を学び、1933年にモンテ・カルロを本拠とするロシア・バレエ団(バレエ・ルッス)の指揮者となり、1941年からアメリカのバレエ史上の大きな足跡を残したバレエ・シアターの創設に音楽監督として参加した。

そうしたドラティにとってチャイコフスキーのバレエ音楽は自家薬籠中の作品と言って良く、コンセルトヘボウ管弦楽団を意のままに動かしながら、丁寧に仕上げている。

まさに自他ともに認めるバレエのスペシャリストであったドラティがその円熟期に残したこの演奏は、細部まで的確に構成された明快でシンフォニックな表現とバレエとしてのドラマをバランス良く合わせそなえている。

ドラティはこのバレエ音楽のメルヘンチックな性格をあますところなく生かしながら、構成的な美しさを尊んだ演奏で、いかにもヴェテランらしい、貫禄十分の名演を展開している。

全曲を通じて、各場面の変化に富んだ描き方も秀逸で、まさに"バレエの神様"ドラティの面目躍如たる会心の演奏。

永年に渡ってあらゆるバレエ音楽を手がけてきたドラティだけあって、その棒が冴え渡り、細部に至るまで神経が行き届いた実に鮮やかな演奏で、リズム処理のうまさはこの指揮者独特のもの。

ヴェテランならではの巧みな表現をきびきびとしたリズムで運んでおり、コンセルトヘボウ管弦楽団がそうした演奏に美しい色彩を添えているのも魅力である。

ドラティは同曲のスコアを極めて綿密に読みつくしていることを思わせ、そのオーケストレーションがもたらす音色的な推移やリズムの変化などを鮮明に描き出しながら、このバレエ音楽の踊りと情景とを見事な構成感のもとに表出している。

彼は、確信にみちた運びの中に力感あふれる表現をしなやかに行き渡らせ、70歳を越えた指揮者のものとは思えないほどの力感と情熱にあふれ、風格あふれる運びと精緻な表現で、音楽の細部を実に的確にバランスよく描きながらも急所はピタリと押さえ、全編が精密に構成されている。

この柔軟で確かなバランスゆえに、聴き手は音楽の大きな流れと新鮮な生命感をたたえた演奏の中にも、細部の魅力を無理なく味わえる。

細部まで実に的確な切れ味の良い表現が生き生きとしなやかに織りなされており、その精緻な美しさと全曲を見通した構成の良さは、数あるこのバレエ音楽の演奏の中でも群を抜いている。

しかも、作品を知りつくした巨匠は、各曲をいかにもバランスよく鮮明に描き分けて、見事なドラマをつくってゆく。

ドラティの指揮は設計が綿密で、しかも演出と表情づけが実にうまく、夢幻的な舞台の雰囲気が手にとるようによくわかるが、こうした表現は実際の舞台の経験が豊富なこの人ならではのもので、コンセルトヘボウ管弦楽団の鋭敏でしなやかに強い集中力をもった反応も素晴らしい。

豊麗なオーケストラの音色も、このグランド・バレエにふさわしく、メロディー・メーカー、チャイコフスキーの旋律美を存分に堪能することができる。

バレエ音楽のスペシャリスト、ドラティという指揮者の並々ならぬ底力のほどを、改めて思い知らされるような演奏であり、彼の透徹した解釈が年輪を加えることによって、いっそう見事な香気を放った名演と言うべきだろう。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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