2017年02月03日

デュトワ&モントリオール響のチャイコフスキー:バレエ《くるみ割り人形》、《オーロラ姫の結婚》[ディアギレフ版/《眠りの森の美女》より]


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チャイコフスキーの音楽の魅力を洗練された響きと色彩で楽しむなら、デュトワ盤は最も魅力的で、かつバランスのよい演奏と言うべきだろう。

チャイコフスキーのいわゆる“3大バレエ”の中でも、とりわけデリケートなファンタジーを感じさせる《くるみ割り人形》をデュトワ指揮によるモントリオール交響楽団は実によく洗練された感性で、スマートに再現していく。

明るい色彩は豊かだし、各表現は的確に描き分けられ、間然としたところがなく、必要以上に重々しくならずに快い流動感を保ち続けているのは、デュトワの力量に負うところが大と言えよう。

ことさらバレエ的な雰囲気をかき立てるような演奏ではないが、洗練された響きと表現で細部まで生き生きと、すっきりした仕上げで、各ナンバーの特色や美しさを過不足なく味わわせてくれる。

かつてはラヴェルのスペシャリストとして注目を集めたデュトワは、確かに無機的な要素を含んだ近代の作品などに独特の卓越した手腕を発揮する指揮者であるが、ザッハリヒな一面をも含んだ彼のそうした持ち味は、対極にあるロマンティックな作品にも、彼ならではの価値ある成果を見せてくれるケースも少なくない。

そしてこのバレエ音楽《くるみ割り人形》は、その代表的な一例と考えてよい演奏であり、全体に爽やかで、テキパキと、チャイコフスキーの色彩的なオーケストレーションを再現した演奏である。

デュトワは、このバレエ音楽のロマンやファンタジーに溺れることなく、厳しくコントロールされた視点をもって作品に臨み、楽譜に秘められた作品の絶対音楽としての純粋な美しさに目を向け、誇張や個人的な思い入れを排して、それをくっきりと描出した演奏を展開している。

この種のロマンティックな作品は、演奏者によって演出が過剰になり、それが演奏を下品なものにしてしまう場合も多い。

しかし、個人的な感情の表出を抑え、禁欲的といえる姿勢で作品を再現しているデュトワは、それによってこの名作の無垢な美しさを引き出しているといってよいだろう。

舞踏音楽としての呪縛から開放して、純音楽的な妙味のみを追求していったような演奏で、比較的小さな編成で、きめ細やかな楽想を丹念に整い上げ、色彩的なオーケストレーションを瀟洒なサウンドで響かせる。

この演奏は、見方によっては常識的で差し障りのない内容であり、いわゆる個性や特徴は希薄である。

しかし、デュトワの醒めた情熱は、ひと昔前の名盤を生んだアンセルメがそうであったように、そのスマートで洗練された表現は、清潔で好感の持たれるものであり、結果的に歪みのない作品の美しさを浮き彫りにすることになったのであった。

特に「こんぺい糖の踊り」と「アラビアの踊り」は傑出していて、いわば純度の高いメルヘンの世界をみせつけられたような印象があり、私たちは、ここでデュトワの美学の意味を認識するべきである。

《オーロラ姫の結婚》は、《眠りの森の美女》の第3幕をベースに縮小改訂したディアギレフ版(全26曲)による演奏で大変貴重で価値が高い。

これは1922年にディアギレフのバレエ・リュスがパリ・オペラ座で上演した演目で、《眠りの森の美女》最大の見せ場である第3幕を中心に1幕ものに仕立て上げたもので、26曲から構成され、婚礼の宴で披露されるディヴェルティスマン風な内容としてまとめられている。

デュトワはこの音楽の持つ華麗な曲想、そして色彩的なオーケストレーションをフランス音楽でも手がけるかのごとく軽妙洒脱なタッチで描き上げ、くだんのチャイコフスキーとは感触が異なった、現実から遊離したメルヘンの世界に徹底してこだわるかのような極めて上品質な美演である。

モントリオール交響楽団の柔らかい響きも素敵で、演奏を細部まで鮮明に、しかもスケール感豊かに捉えた録音の優秀なことも大きな魅力だ。

まさに、指揮者、オーケストラ、録音と3拍子条件のそろった名盤と言えるだろう。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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