2017年02月26日
ロストロポーヴィチ/ユニヴァーサル音源全集
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20世紀ロシアの頂点に立った器楽奏者の巨匠を語るとき、チェロのロストロポーヴィチ、ヴァイオリンのオイストラフ、そしてピアノのリヒテルの存在は欠かせない。
彼らは既に他界して久しいが、遺された録音はその音楽的価値から言っても将来のクラシック音楽界にとって無視できないサンプルになり得るに違いない。
最近のバジェット価格による限定箱物ラッシュに乗じて、大手メーカーからそれぞれの全集がリリースされている。
ロストロポーヴィチの場合EMIからのコンプリート・エディションが法外なプレミアム価格で販売されている現在、今回のユニヴァーサルのセットは待望されていた企画だし、俄然その価値を高める結果になっている。
ただしワーナーからは3月末にEMI音源を核にした3枚のDVD付CD40枚組コレクション仕様のセットがリリース予定だ。
尚CD25からは彼の指揮者及びピアニストとしての演奏が収録されていて、彼の指揮した2曲のオペラ、プッチーニの『トスカ』及びチャイコフスキーの『スペードの女王』全曲と夫人のソプラノ、ガリーナ・ヴィシネフスカヤの歌ったロシア歌曲集2枚が組み込まれ、総合的な音楽活動を記録したインテグラルなコレクションになっている。
72ページのブックレットには収録曲目及び録音データ一覧とダヴィッド・ゲリンガスによるエッセイが掲載されている。
アンサンブルではリヒテルと協演した1960年代初期のベートーヴェンのチェロ・ソナタ全曲が白眉で、2人の巨匠の顔合わせだけあって、大変スケールの大きな演奏である。
朗々と高鳴るチェロ、それを支える芯の強いピアノ、両者の間に、目に見えない火花の散っているかのような迫真的な名演だ。
2人の名手が火花を散らすようにぶつかり合い、自分の音楽を主張しながら、そこに絶妙な調和を生み出しているこの演奏は、二重奏の最も高度な境地をうかがわせる。
骨格のたくましい、正攻法的な演奏で、実にみずみずしい音楽を作り、また感興豊かで細部まで深く練り込んでいて、それぞれの作品の性格を明快に表わしていることでも、これに優る演奏はないだろう。
最も聴き応えがあるのは第3番で、第1楽章の冒頭の部分を聴いただけでも、2人の名人の物凄い気迫と緊張した呼吸が、聴き手にも伝わってくる。
ロストロポーヴィチとリヒテルが火花を散らしつつ繰り広げてゆく二重奏の中から、ベートーヴェンの威容がくっきりと姿を見せ、聴き手を圧倒する。
この魅力に抗し得ない人が音楽ファンのなかに果たして存在するだろうか?
当時の旧ソヴィエトには個性を主張できた伴奏者は極めて少なく、精緻だが機知や精彩を欠いたピアノに冷たさを感じた演奏も多かった。
流石にリヒテルとのベートーヴェンやゼルキンと組んだブラームスの2曲のチェロ・ソナタ、ベンジャミン・ブリテンのピアノ伴奏によるアルバム、あるいはCD19から21にかけてコーガン、ギレリスが加わるピアノ・トリオ集などは演奏水準の高さもさることながら、表現力の多様さでもそれぞれが互角の立場で作品に臨んでいるところが聴き逃せない。
ロストロポーヴィチは晩年表現がやや厚化粧になる傾向があったが、彼の確信に満ちた解釈は常に明白な説得力を持っている。
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