2017年02月28日
オイストラフ/ユニヴァーサル音源全集
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ダヴィッド・オイストラフがユニヴァーサル傘下のレーベルに遺した音源を集大成した企画で、ドイツ・グラモフォン、デッカ、フィリップス及びウェストミンスターへの録音がCD22枚に纏められている。
このうちブルッフの協奏曲では彼が指揮に回ってソロは息子のイーゴリが弾き、モーツァルトの協奏交響曲ではイーゴリがヴァイオリン、彼はヴィオラを担当しているが、いずれにしても20世紀が生んだ最も優れたヴァイオリニストの遺産がバジェット・ボックス化されたことはファンにとって朗報に違いない。
既出のEMI『ザ・グレイト・レコーディングス』17枚組と合わせると彼の代表的なレパートリーをカバーする重要なコレクションになることは疑いないだろう。
協奏曲集ではEMIのセットが凌駕しているが、オイストラフ・トリオを組んだクヌシェヴィツキー、オボーリンとのアンサンブルやソナタなどの室内楽はこちらに貴重な音源が数多く収録されている。
中でもCD17−20のベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲はオイストラフとオボーリンによる記念碑的な遺産であり、彼らの音楽性が典型的に示された、20世紀の演奏芸術の最高峰と言えるレコーディングとして高く評価したい。
それは音の美しさや技術の練磨とともに、2人が厳しい客観性を持って楽譜を見つめ、あらゆる余剰を切り捨てた上に自分たちの音楽的活動を注ぎ込んだためだ。
そこに高貴なほど格調の正しさを持ち、あらゆる音符に意志と感情を通わせた稀有の名演が成立し、深い精神性をもって聴き手を押し包み、現代の最も普遍的なベートーヴェン像がここに屹立している。
オイストラフとオボーリンの最盛期の録音だけに、音色も美しく、音楽の作り方も、ふっくらとした中に、作品の神髄に迫る迫力のある演奏となっている。
オイストラフとオボーリンは全体にやや遅めのテンポをとり、それによって豊かな表情を付け、脂の乗り切った2人の、ベートーヴェンの音楽への深い共感が伝わってくるかのようだ。
例えば《クロイツェル》がその良い例で、ロマン的香気に溢れ、音楽的にも大変充実しており、気迫のこもった熱っぽい演奏を行っている。
両者ともに絶頂期にあった演奏で、しっかりとしたテクニックに裏づけられ、表現意欲に燃えていて、特にオイストラフの豊麗な音色と滑らかなボウイングで辿る骨太な構成力と揺るぎない安定感は特筆される。
第1回ショパン・コンクールの覇者でもあったレフ・オボーリンの正確だがいくらか杓子定規で融通性のないピアノに不満がないでもなく、現代となってはそのスタイルに古めかしさを感じないでもないが、完成度の高さは認めざるを得ず、ベートーヴェンのソナタ演奏を代表する名演と言える。
その他にもCD8のラヴェルの『ツィガーヌ』やCD9のアンコール・ピース集など彼が後年レパートリーから外してしまった曲目が聴けるのも幸いだ。
またチェンバロのハンス・ピシュナーとのバッハのヴァイオリンとオブリガート・チェンバロのためのソナタ全曲は廃盤になって久しかったアルバムだ。
彼が何故バッハの無伴奏ソナタとパルティータを弾かなかったのかは分からないが、もし全曲録音を果たしていればさぞ魅力的な演奏であっただろうと想像される。
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