2017年03月30日
ディヌ・リパッティ/ベリーベスト・セレクション
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1950年に33歳で夭折したディヌ・リパッティの遺した音源は既にセッション、ライヴ共に出尽くした感がある。
後はリマスタリングによる音質の向上とバジェット価格によるリイシューが購入の目安になるが、こちらは彼の生誕100周年記念として今年になってワーナーからリリースされたべリーベスト盤だ。
パンフレットの最後にCD1及び2が2008年、CD3が2011年のリマスタリングと記されているので、EMIからイコン・シリーズで出ていた7枚とは3枚目のブザンソン告別演奏会のみが異なった新しいリマスタリングということになる。
ちなみに現行のSACDではプラガ・ディジタルスのものが唯一のアルバムで、その他に網羅的なレパートリーを集めたレギュラー・フォーマットのセット物ではドキュメンツからのウォリット・ボックス10枚組があり、また最近独プロフィールからもやはり100周年記念のリマスター盤12枚組がリリースされた。
音質を聴き比べてみると最も優れているのが当セットで、ステレオ期到来を待たずに亡くなった彼が遺した音源は総てモノラル録音ながら、比較的重心のしっかりしたサウンドが再現されている。
CD1のシューマンのピアノ協奏曲では若干雑音が聞かれるにしても、全体的には以前のCDの欠点だった平面的で干乾びたような音質はかなり聴きやすい状態に改善されている。
燃え上がるようなリパッティのソロが前面に出て臨場感を高めていることもあって1948年のセッションとしては充分に満足のいくリマスタリング効果が認められる。
モーツァルトの第21番は2年後のライヴでやはりカラヤンの指揮になり、音質的にはシューマンに及ばないがソロの部分は良好に捉えられている。
尚急速楽章に使われているふたつのカデンツァはリパッティ自身の手になる作品だ。
CD2ではSP盤から板起こししたようなスクラッチ・ノイズが随所に聞こえてくるが彼の豪快なピアニズムを堪能するにはさして邪魔にならない。
リパッティの作曲の師であったナディア・ブーランジェとのブラームスのデュエット集は、最も古い1937年の音源であるにも拘らず、音質は時代相応以上で、速めで生き生きとしたテンポ設定が来たるべきモダンな奏法を早くも先取りした新鮮な印象を与えている。
ラヴェルの『道化師の朝の歌』は殆んど狂気と紙一重のところの演奏で、他のどのピアニストよりもドラマティックで彼の恐るべきテクニックが示された積極性に驚かされる。
最後の1枚は最新のリマスタリングということだが、音源自体理想的なものではなく、確かにボリューム・レベルが上がってピアノの音色がより明瞭に聴き取れるが、同時に機材の共振も入っている。
しかしながらこのブザンソン告別演奏会は1人のピアニストとして、また1人の芸術家としての人生の終焉がこれほど厳しいものでなければならなかったか痛感させる。
当日のリパッティの演奏が決して病的なものではなく、逆に輝かしい精彩に富んでいるだけに尚更だ。
ライナー・ノーツはなく、収録曲目と録音データのみを掲載した7ページのパンフレット付。
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