2017年04月05日

ヴェーグSQのバルトーク:弦楽四重奏曲全集(旧盤)


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戦後のハンガリーを代表するカルテットのひとつがヴェーグ四重奏団で、彼らは早くからベートーヴェンを始めとする弦楽四重奏曲の全曲録音を手掛けた。

中でも郷土の作曲家バルトークの演奏では良い意味での土の薫りを放つようなローカル色と大地から湧き出るような力強さが特徴だ。

ヴェーグ四重奏団は1954年及び1972年の2度の全曲録音を果たしているが、筆者はこれまで第1回目の録音はモノラルでしか聴いたことがなかった。

このセットを鑑賞する前はおそらく電気的に音場を拡げた擬似ステレオだろうと邪推していたが、実際聴いてみると分離状態や解像度に関しては理想的とは言えないにしても、楽器の位置関係はそれなりに確保されたごく初期のステレオ録音であることが感知できる。

ライナー・ノーツにはヴェーグの抜きん出た芸術性から、敢えてプラガでは最初のステレオ・テープからこのCDを制作したと書かれてあり、新しいリマスタリングの成果も充分に満足のいくものだ。

英コロムビアでは既にこの時期試験的にステレオ録音を始めていたようだが、初出LP盤以来モノラルでリリースされていた。

ちなみに1972年の同曲集の再録音はアストリー・レーベルの音源をナイーヴがCD化した3枚組でリイシューされている。

確かに第2回目に比べれば音質で劣っていることは否めないが、この演奏にはそれを補ってあまりあるほどの覇気に満ちていて、そこに当時の気鋭のメンバーの野心を伝えている。

豊かな音響と余裕ある表現で人間味豊かな音楽をつくっていた第2回目の録音も忘れ得ぬ名演奏だが、第1回目の旧録音のすべての虚飾を切り捨ててまるで音楽の核心だけを捉えたような演奏は、この不滅の6曲の演奏のひとつの原点として貴重だ。

まさに正面から作品とがっぷり四つに組み、技術的にも音楽的にも一切の妥協を廃した極めて厳しい姿勢に貫かれた演奏。

ただそれらが充実した精神的内実に裏付けられているため、すべてが人間的メッセージとして聞こえてくる名演である。

また鮮烈な野趣に溢れていながら決してグロテスクな表現ではなく、随所に聴かせる鋭い閃きや地に足の着いた堂々たるアンサンブルは、シャーンドル・ヴェーグ60歳の再録音では、この勢いが衰退している。

第1ヴァイオリン、シャーンドル・ヴェーグ、第2ヴァイオリン、シャーンドル・ゼルディ、ヴィオラ、ジョルジュ・ヤンツェル、チェロ、パウル・サボーで、彼らは1940年の結成以来1978年までヴェーグ四重奏団の殆んどのキャリアをカバーしたメンバーだった。

4つの楽器のアンサンブルが極めて緊密なうえに音響上の統一も高度で、あたかも全体でひとつの楽器が鳴っているかのよう。

美音に走らず媚びを売らぬその演奏は、聴き手にも異常な神経の集中を要求しつつ、バルトークの厳しくも清冽な精神に肉薄する。

まるで、聴くことが、ひとつの修練であるような演奏は、今はかえって貴重だ。

尚このジェニュイン・ステレオ・ラブは同じプラガ・ディジタルスによるSACDシリーズとは別の新企画で、レギュラー・フォーマットであることを念頭に置かれたい。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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