2017年05月01日

タカーチュSQのバルトーク:弦楽四重奏曲全集


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バルトークは、当時のドイツ主流の音楽体制にNOといった人で、盟友コダーイとともに、音楽の原始的な鼓動を聴き、独自の音楽語法を確立するために、休暇と収入の殆どを注ぎ込み、民謡の採集を行った。

したがって、その演奏は、音楽本来の持つ根元的なパワーを感じさせるものでなくてはならない。

とはいえバルトークの弦楽四重奏曲を看板とし、3度録音したジュリアードSQのような革新性も今や過去のものとなり、最近の団体は洗練された技術やアンサンブルによって、同曲を古典として演奏するようになった。

それらの中でも最も評価の高いのはウィーンのアルバン・ベルクSQであるが、あまりにも「当たり前」の音楽にしすぎているのではないだろうか。

筆者が現在最も気に入っているのは、1993年から新メンバーとなったハンガリーのタカーチュSQによる全集(1996年)で、演奏・録音ともに優秀、従来のバルトーク演奏とは著しく異なるアプローチを見せてくれた。

技術的には洗練の極に達しているのに、ハンガリーの団体だけにバルトークの音楽の内容に深く入り込み、心に訴えかけてくるのである。

彼らはバルトークの音楽に潜む悲劇性よりも明るい人間性に光を当て、打楽器的な衝撃音は弦楽器が本来持つ暖かいテヌート音に、緊迫した不協和音は巧みな音色操作で協和音に変身させている。

無機質なグリッサンドや、スル・ポンティチェロ奏法にも艶めかしい表情を付け、スケールや分散和音には草原のそよぎが目に映る。

初期の第1番、第2番からして響きが豊かに拡がり、まるでモーツァルトでも演奏するような気楽ささえ感じるが、彼らがその音楽に心酔しバルトークの心情を語り尽くしているからこそ、その説得力はより強烈に感じられるのだ。

第3番は哀切なため息のような冒頭から、耳にも心にもグサッと突き刺さってくる。

第1楽章の重い和音はきわめて意味深く、表情はたっぷりなのにハーモニーはどこまでも澄み切っている。

第2楽章も何という素晴らしい音楽だろうと思わせる。

第4番は第1楽章の粘着力に作曲者の魂が宿り、常にコクと豊かさがあり、各パートが充分に自己主張をしつつバランスを崩すことがない。

第2楽章は音色自体がすでに味濃く、作曲者の言いたいことが如実に伝わってくる。

第3楽章はノン・ヴィブラートの出から曲と一体化した雄弁さがあり、しかも力みは一切見られない。

第4楽章の鮮やかなメリハリは落ち着いたテンポとともに楽しささえ感じさせ、第5楽章はいかに激しくてもあくまで有機的だ。

第5番の第1楽章は動的かつ大柄に始まるが、第2主題の静かな哀しみは、心にまとわりつく訴えの強さと音色の美しさにおいて比類がない。

第2楽章の哀切さも抜群、第4楽章には詩情があり、リズムは語り、哀歌も登場する。

第5楽章の即興性を伴った筆致とシンフォニックな響きも圧倒的である。

第6番は音楽の心をメンバーが完全に自分自身のものにしていることがわかる。

どこまでも孤独な哀しみの歌だが、陰惨ではなく、一縷の希望を秘めていることころが素晴らしい。

しかし終楽章に至って、別離の哀しみはいよいよ深くなり、聴く者の心に浸透してくるが、なお手放しの悲嘆は抑えられているのである。

新生タカーチュSQの当録音は、41歳で世を去った創立時のヴィオラ奏者オールマイの思い出に捧げられている。

そのため、というのは出来すぎだが、確かにこの演奏には「祈り」がある。

どんなに、作曲家の苦悩と慟哭が音に刻まれるときも、その彼方には安らかな明かりが見えるのだ。

バルトークには救いがなさすぎる、と敬遠気味だった筆者の心に、新しいバルトークの在り方を示してくれた全集である。

感謝とともに合掌。

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Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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