2017年05月05日

ジュリアードSQのバルトーク:弦楽四重奏曲全集(1981年録音)


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バルトークの弦楽四重奏曲は、作曲の状況を反映して性格と様式を異にするが、それをどのような視点から取り上げるかによって、演奏はかなり違ってくる。

ロマンティックな叙情をふんだんに持っている第1番から、激しい表情の第3番、古典的な佇まいを持った第6番まで表情が大きく変化を見せるのですべてを高い完成度で演奏するのは至難の業である。

ジュリアード弦楽四重奏団は安定した技術と幅広い音楽観によって、全集を3回録音する偉業を成し遂げたが、いずれも緻密に緊張の糸を紡いでいく練り上げられた演奏で、その見事な仕上がりには舌を巻く。

作品を現代音楽として知的な立場からアプローチし、強い集中力と完璧なアンサンブルとともにバルトークの厳しい精神と激しい意欲を再現する。

そこから生まれる鋭い気迫と強い緊張感はバルトークの性格の一面であることは確かで、一昔前の演奏様式だが、それなりの必然性を持ち、バルトークの音楽が持っていた「新しさ」を現代まで伝えてくれる。

ただ、ロバート・マン以外のメンバーはその度に違った顔ぶれで、2度目の1963年の演奏も捨て難い魅力があるが、残念ながら現在入手難。

この1981年の録音は3度目のもので、音質の透明度が最も高く、呼吸がぴったり合っていて、アンサンブルが自然である。

しかし、ヴィオラにしても、チェロにしても、みな出色の音の美しさと演奏能力を兼ね備えており、音楽創造の理念と水準は極めて高く、ジュリアードSQの演奏はバルトークの弦楽四重奏曲の解釈でひとつの典型となっている。

バルトークの弦楽四重奏曲は、ベートーヴェンやシューベルトなどの作品と違って、特殊な弓の奏法が多く用いられ、殊に第4番などでは、俗に爛丱襯函璽風のピツィカート瓩箸い辰拭特異なピツィカートが使われている。

それだけに技術的にすこぶる至難な作品となっているが、この団体による演奏は、いつもながらの完璧な技巧と、鋭く新鮮な感覚とで、見事に弾きあげたものだ。

彼らの、演奏という名の創造行為には、高度の緊張と献身的な情熱が漲っているのだが、それこそはバルトークのこうした大作を弾くのに最も適合した条件である。

インパクトの強さでは、当時の四重奏の常識的な技術水準を遥かに抜け出た1963年の精緻極まりない演奏が今なお驚嘆に値するが、こと音楽的な熟成という点では、18年後にレコーディングされたこの全集が明らかに上だと筆者は思う。

4人の心の内に燃えるものは同じように熱いが、彼らの眼差しが、技術的な興味をもはや越えて、音楽の核心にまっすぐに注がれているところが何よりも素晴らしい。

かつては、テクニックが前面に押し出された表現が目立ったが、ここでは、情感豊かに表現しており、旋律のひとふしひとふしに心が込められているところにひきつけられる。

つまり、緻密なアンサンブルを組みながら情緒面も尊重し、その各人の情緒表現に統一があるために、どの曲も強い迫力を帯びた、表現力に富んだ音楽となり、6曲を通して聴いてもマンネリズムに陥ることがない。

そのことが結果的にメカニカルなスコアの行間にある、人間バルトークの思いを感動的に伝える。

勿論情緒だけを大切にするのではなく、構成もはっきりしているので、どの曲も聴き応え充分だ。

もはや現代の古典となったこの作品の楽譜を新しい観点から見直し、音そのものの本来持っている機能に着目し、それを明快に再構成したジュリアード円熟の至芸と評価したい。

録音も、弦の艶やかな響きをよく捉えた、優れたものだ。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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