2017年05月17日

アルバン・ベルクSQのベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集(第1回目)


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アルバン・ベルク弦楽四重奏団の評価を決定づけたベートーヴェンの全集の第1回録音(1978年〜1983年)で、1985年度レコード・アカデミー賞受賞盤。

この団体の強い音楽的個性や主張がアルバム全体を通して終始一貫しており、今尚実に強烈な印象を残すアルバムである。

全体にテンポはやや速めだが、決して軽薄に流れず、むしろメリハリが実に明確で、音楽を絶えず前へ前へと駆動する力に溢れているため、若々しい推進力や軽快な躍動が生まれる。

清新な意気に満ちた初期作品や強い集中力によって統御された緊張度の高い中期作品群も素晴らしいが、何よりも後期作品集の一期一会的な完成度の高さが魅力的である。

ベートーヴェンの音楽に内在する可能性を鮮烈に引き出した演奏で、アンサンブルの緊密度や柔軟性、各奏者の技術的、精神的な充実感も並々ならぬ高さにある。

初めて彼らの弦楽四重奏を聴いた時には、例えばOp.95『セリオーソ』の極限まで高揚するようなアグレッシブなアタックや第1ヴァイオリンを受け持つギュンター・ピヒラーのスタンド・プレー的な独特のディナーミクにいくらか違和感を持ったが、曲を追って聴き込んでいくうちに決して表面的でグロテスクなパフォーマンスではないことに気付いた。

そこには外側に表出されるサウンドの斬新さとは裏腹に曲の内部へ掘り下げていく表現の凝縮を感知させることにも成功しているからだ。

しかも彼らのアンサンブルは精緻を極めていて、4人の士気の高さとともに音色には特有の透明感がある。

個人的には特に後期の作品群が、最も彼らの解釈に相応しいのではないかと思うところで、第15番になると鮮明さを強調しすぎることなく音のバランスが良くなっている。

聴覚を失って音響から切り離された世界で作曲を続けなければならなかったベートーヴェンの境遇を考えれば、どうしてもそこにセンチメンタルな表現を期待しがちだが、彼らはむしろクールな情熱で弾き切り、清澄だが感傷的なイメージを払拭することによって新時代のベートーヴェン像を見事に描き出しているところが秀逸だ。

改めて感じたのはこの団体がウィーン出身であることで、スピード感、刺激といった現代的なセンスをもちながら、決して優美さを失わないのである。

強い表現性をもちながら、知・情・意のバランスの良い演奏は筆者の長年の愛聴盤になっている。

旧セットと曲目の配列もCDの枚数も全く同様だが、ワーナー・バジェット・シリーズのひとつとして更にプライス・ダウンされている。

現在多くのレーベルから一斉射撃のようにリリースされている箱物廉価盤は、それぞれが限定生産と銘打ってあるにせよ、芸術的な価値は別としていわゆる減価償却を終えた商品なのだろう。

こうした企画のラッシュは初出時に1枚1枚正価で買い集めたオールド・ファンにとっては、ミュージック産業の生き残りを賭けた熾烈なサバイバル戦を垣間見るようで、何とも複雑な思いがする。

しかしこれからクラシックを聴き始める入門者や若い世代の人達には勿論またとないチャンスには違いない。

それは兎も角として、アルバン・ベルク四重奏団は2008年7月の解散までに都合2回のベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲録音をしているが、この演奏は1978年から83年に行われたセッションで、第2回目は1989年のウィーン・コンツェルトハウスでのライヴが同じくワーナーから再リリースされる。

メンバーの息遣いが聴こえてくるような鮮明な録音も驚異的で、それが緊張感漲る演奏の特質を一層強めているのに気付き、レコード芸術において演奏と録音が不可分であることを印象づけられる。

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