2017年05月25日
ジュリーニ&サンタ・チェチーリア音楽院のケルビーニ:レクイエムハ短調
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カルロ・マリア・ジュリーニは1948年にヴェルディの『椿姫』で本格的なオペラ指揮者としてのデビューを飾り、1953年からはヴィクトル・デ・サーバタの後を引き継いで39歳の若さでミラノ・スカラ座の音楽監督に迎えられた。
本盤に収録されたケルビーニの『レクイエムハ短調』はその前年1952年の録音になり、かなり珍しいレパートリーだが、彼の宗教曲に対する巧妙な手腕が示された貴重な音源で、作曲家の完璧とも言える精妙な対位法が織り成す高貴で厳粛な雰囲気とラテン的な劇場感覚の双方を見事に表現している。
歴史的にはトスカニーニ以後の2番目の録音で、ジュリーニはその後も再録音の機会を持たなかった。
但し音質に関しては、リマスタリングは良好なものの時代相応のモノラル録音であることが惜しまれる。
オーケストラ及びコーラスはジュリー二の母校、ローマのサンタ・チェチーリア音楽院の演奏で、イタリアらしい明快で屈託のない演奏に貫かれているが、先ず入祭唱のしめやかな「キリエ」に引き込まれる。
全体的にジュリーニはシンプルでストレートな解釈を示していて、第3部のブラス・セクションと銅鑼で告げられる「怒りの日」を聴いていると彼のヴェルディの『レクイエム』を彷彿とさせる。
それはヴェルディがこの作品からインスピレーションを得ているからだろう。
勿論ヴェルディは「怒りの日」で全オーケストラを鳴らし切る壮絶なサウンドを創り上げているが、その原形がここにあるような気がする。
オッフェルトリウムの壮麗な二重フーガでの統率も隙がなく、クライマックスを導くストレッタでの混声合唱の声部の綾も明瞭に再現している。
ルイジ・ケルビーニ(1760-1842)は2曲の『レクイエム』を遺しているが、このハ短調はフランス王政復古後1815年にルイ16世処刑後23年の追悼式典のために作曲されている。
彼はイタリア人だったが後年フランスで重用され王党派の1人として革命も経験している。
特有の厳粛さはおそらく声楽陣のソリストを欠いているからだろう。
と言うかケルビーニはこの『レクイエム』をことさら派手に聴かせるようなアピールは一切していない。
そこには葬儀のための音楽として忠実に奉仕した無欲さが感じられる。
しかし決して地味な作品ではなく、コーラス及びオーケストラの書法は練達を極めていて、全く無駄のない効果的な音響に驚かされるし、ベートーヴェンが称賛したというエピソードも疑いのない事実だろう。
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