2017年05月27日
アンタイのスカルラッティ:ソナタ第4集
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フランスを代表する古楽奏者といえばアンタイ3兄弟で、ベルギーのクイケン3兄弟と共に大家グスタフ・レオンハルト健在時には多くの協演も果たしてきた。
次男でチェンバリストのピエール自身アムステルダムでレオンハルトの下で2年間の研鑽を積んでいる。
しかし彼は師の厳格な奏法を学びつつも、ネーデルランド派の荘重な古楽よりもラテン的な自由闊達さで名技主義的な華麗な演奏を得意としている。
彼がフランス・ミラール・レーベルに移ってから再録音を始めたドメニコ・スカルラッティのソナタ集はこれで4集目になり、引き続き今月第5集もリリースされるので、これまでのソナタ49曲とフーガ1曲に続いて更に33曲が加わったことになる。
使用楽器は常にヒストリカルからのコピーだが音色の選択にも凝っていて、今回は18世紀の無名のドイツ製チェンバロからフィンランドの古楽器製作者ヨンテ・クニフが2004年にコピーした楽器で、ピッチがa'=415Hzで前回よりもやや高めに設定してあるために、張りのある鮮やかな音響を再現しているのが特徴だろう。
選曲やライナー・ノーツから判断するとアンタイはスコット・ロスやピーター=ヤン・ベルダーのような全曲録音を達成する決意は窺われない。
曲順も決してクロノロジカルに初期の作品から後期に向かって片っ端から弾いていくという録音方法ではなく、それぞれが1枚のアルバムとして完結するように選曲されていて、ここにも彼のアルバム制作へのポリシーが表れている。
尚2曲目に収録されたK.247はオリジナルの調性は嬰ハ短調だが、アンタイは半音上げたニ短調で演奏している。
これは響きの美しい三度の和音を得るための当時の調律方法は、音の間隔をずらせてしまう変位記号に弱いため、それによって引き起こされる調子外れを避けたためと考えられる。
音質はチェンバロの華麗さと、一方でヒストリカル楽器特有の繊細さも捉えていて極めて良好だ。
ドメニコ・スカルラッティ(1685-1757)はナポリ派オペラで名声を博したアレッサンドロ・スカルラッティの息子として奇しくもバッハ、ヘンデルと同年にナポリに生まれている。
彼は当初ポルトガル宮廷の王女バルバラ・デ・ブラガンサの音楽教師としてリスボンに赴任したが、スペイン・ブルボン家の王子フェルディナンドと王女の結婚によってマドリードで生涯を終えることになる。
計555曲にも及ぶ一連の鍵盤楽器用ソナタは王妃バルバラのエチュードとして作曲されたものだが、バッハの『平均律』のような総ての調性をくまなく厳密に配列したペダゴジカルな性格は持っていない。
むしろ斬新な響きと奏法を実用的な練習曲の中に追求した高度な気分転換の要素を伴った小品というべきかも知れない。
豊富なインスピレーションに満たされていてK.212やK.457では明らかにアンダルシア風のギター音楽から採り入れたと思われる音形や不協和音が使われている。
現代の多くのピアニストがコンサートのプログラムに加えるのも、簡潔で生き生きとした生命力と可憐な楽想に溢れているからだろう。
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