2017年06月02日
ジャック・ジャンセンのフランス歌曲集
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パリ生まれのバリトン、ジャック・ジャンセン(1913-2002)が1952年にデッカに録音したLP2枚分の音源を1枚のCDに纏めたアルバム。
ここに収録された総てのレパートリーがフランスの作曲家の作品であることに象徴されているように、彼の歌唱はフランス語の持つ言葉としての表現力を多彩に引き出し得た演奏だ。
彼が歌詞から紡ぎ出す千変万化の微妙なニュアンスは、他の言語を母国語に持つ歌手には殆んど不可能に近いほどの独自の美学を体験させてくれる。
イタリアのバリトンのように輝かしくもなくヒロイックでもないが、それは作曲家達がそうした効果を求めていないからである。
こうした価値観を共有できる人にとってはジャンセンの軽やかな語り口やテノールのようなファルセットーネを巧みに使った歌い回しにコケティッシュな魅力やそれほど深刻さのない喜怒哀楽、皮肉等が見事に捕らえられていることが理解できるだろう。
ベル・エポック期を代表するアーンの歌曲集ではベルレーヌの詩による『灰色の歌』が全曲でないのが惜しまれるが、「秋の日のヴィオロンのため息の・・・」や「恍惚の時」の憂愁や抒情が美しい。
当時のデッカが誇ったフル・フリークエンシー・レンジ・レコーディング(ffrr)の音質は極めて良好でノイズも殆んどないが、一部で板起こしと思われる隣の音溝の音が直前にかすかに聞こえる現象が起きている。
簡易なライナー・ノーツが付いているが、廉価盤の宿命で歌詞対訳は掲載されていない。
ジャンセンはピエール・ベルナックやシャルル・パンゼラの後に続くフランス系バリトン歌手で、彼自身パンゼラの高弟でもある。
比較的軽い硬質で高音にも恵まれていたために、テノールで歌われることも多いドビュッシーのオペラ『ペレアスとメリザンド』のペレアス役で決定的な成功を収めている。
このCDでの演奏の殆んどがジャクリーヌ・ボノーのピアノ伴奏によるものだが、ラヴェルの『マダガスカル島民の歌』3曲ではフルートのランパルとチェロのジャンドロンが助奏に回ってのサポートで華を添えている。
一方得意のペレアス役はやはりモノラル録音ながら、クリュイタンスがフランス国立放送管弦楽団を振った1956年の全曲録音があり、可憐で神秘的なメリザンドをデ・ロス・アンへレス、またゴローをほぼ同世代のスゼーとの協演で堪能することができる。
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