2017年06月24日

フルトヴェングラー&ベルリン・フィルのブルックナー:交響曲第9番/第7番より第2楽章[SACD]


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先ず収録曲の音質についてだが、音源はいずれも第2次世界大戦中のものであることを考慮すれば時代相応と言うことができる。

録音方法も使用されたマテリアルも最良とは言い難いが、幸いマスター・テープは破綻のない保存状態で残されていたようだ。

SACD化によって音場に奥行きが出て比較的余裕のある音響が再現され弦の高音にも潤いが出ているが、分離状態に関してはそれほど改善はみられない。

クライマックスの全オーケストラが鳴り響く総奏部分では音割れこそないが団子状態になってしまいそれぞれの楽器固有の音が再生し切れていないが、これはこの時代のモノラル録音の宿命だろう。

併録されている交響曲第7番の第2楽章は更に2年遡る1942年の録音だが、皮肉にもこちらの方が良好な音質が保たれている。

ただし収録は第2楽章アダージョのみで、1949年から51年にかけて彼がベルリン・フィルを振った3回の同曲の全曲録音とは別物で、単独で遺された放送用ライヴ音源のようだ。

幸いどちらも聴衆からのノイズは一切混入していない。

フルトヴェングラーの指揮したブルックナーの交響曲第9番では唯一の音源が1944年10月7日のベルリンに於ける当ラジオ・ライヴである。

このブルックナー未完の大作は終楽章を欠いた形で遺されていて、原典主義を重んじたフルトヴェングラーは、作曲家の書いた楽章以外には何も付け足さずに第3楽章迄で演奏を終了している。

それでもこの曲の演奏時間はトータル57分59秒で、完成していれば彼の交響曲の中でも最大の規模を持った作品になっていた筈だ。

それだけにこの曲の解釈は演奏家は勿論、音楽学者や批評家によって様々で、フルトヴェングラーの遺したこの録音は自己主張が強く、極めて劇的で豪快、振幅の大きい音楽である。

特に曲中でしばしば起こる恣意的で性急とも思えるテンポの変化が現代人の私達の耳にはあざとく聞こえて、この作品ではもっと素朴で端正な表現が望ましいと批判の矢面に立たされることが多いようだ。

それが時代遅れの手法であるか否かはこの際問わないことにして、ブルックナーがオーケストレーションの中に描き出したセオリーとエモーションが高い次元で止揚される壮大な音楽的構想は感じ取ることができると思う。

それはスコアから作曲家の楽理だけでなく宗教観や哲学を読み取る術を知っていた大指揮者ならではの解釈に違いなく、それを敢えて否定する気にはなれない。

従って、必ずしも万人向きの演奏ではないかも知れないが、途轍もない大きなエネルギーを秘めたフルトヴェングラーならではのブルックナーである。

大戦が敗色濃厚になっていたこの時期のドイツでベルリン・フィルを率いてブルックナー最後の大曲を録音すること自体異例な催しとしか考えられないが、ナチによる国民への士気高揚のためのプロパガンダのひとつだったのかも知れない。

ブルックナーの死への恐怖がドイツの滅亡の予感と共鳴しあい、この上ない凄絶な音楽を生み出していて、クレッシェンドとともにテンポが大きく揺れ動き、大きな音楽のうねりを作り出す。

しかも、それは外面的な効果とは全く無縁で、ブルックナーの音楽から決して逸脱おらず、この作曲家にはこうした一面もあったのだと改めて教えてくれる。

フルトヴェングラーにしてみれば自身の確固たる音楽的信念からの選曲だったに違いないが、ナチへの協力者というレッテルを貼られて戦後の一時期楽壇から追放されたのはこうした活動に起因しているのだろう。

しかし敗戦2週間後にベルリン・フィルは逸早く戦後最初のコンサートを開くことになる。

今度はソヴィエトのプロパガンダだったのだが、こうした大きな政治的変遷に振り回されながらも彼らはドイツの文化遺産を絶やすことなく継続していくことになるのは象徴的だ。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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