2017年06月28日
ムラヴィンスキー・エディション第2集
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独自のリマスタリングで一昨年スタートしたプロフィール・レーベルからのムラヴィンスキー・シリーズの第2集になり、第1集と合わせると都合12枚のCDがリリースされたことになる。
今回は戦後間もない頃の古い音源も多いが、破綻のないまずまずの音響が再現されている。
但し一番新しい1960年から62年にかけてのライヴになるベルリオーズの『幻想交響曲』、ストラヴィンスキーの『火の鳥』そしてR.シュトラウスの『アルプス交響曲』の3曲を含めてここに収録された総ての音源がモノラル録音であることを断わっておく必要がある。
オーケストラは全曲レニングラード・フィルで、この6枚には初出音源は含まれないが25年に亘る一時代を築いた彼らのコラボの歴史を垣間見ることができるシリーズになっている。
曲目はやはりロシア、ゲルマン系の作品が中核をなしているが、CD2ではベルリオーズとビゼーが加わって巨匠のフランス物への解釈も聴きどころのひとつだ。
CD1の『くるみ割り人形』の音質の良さは意外だった。
バレエ音楽からの13曲の抜粋ながらムラヴィンスキーの精緻な表現が活かされた1940年代のセッションとしては貴重な音源だろう。
CD3の『火の鳥』はムラヴィンスキーの絶対的な統率力が示された演奏で、音質も比較的良好だが、最前列の聴衆の1人の咳払いが酷く、緊張感が削がれてしまう嫌いがある。
CD2の『幻想交響曲』、CD5の『アルプス交響曲』は共に異色の演奏で、特に後者はリヒャルト・シュトラウスのイメージしたアルプスの描写とはかなり異なった、殆んど氷河期のアルプスといった峻厳で冷徹なサウンドが聴こえてくるのが興味深い。
ここに描かれているアルプスは1度足を踏み入れたが最後、人間など2度と生きて帰れないほどの厳しい環境を想像させる。
例えば、開始してすぐの「日の出」などはすべての物を一瞬にして焼き尽くすほどの恐ろしい炎を思わせるし、その後の「氷河の上」などは引き裂かれるような響きである。
この演奏が優れたステレオ録音だったら、この曲の他の演奏は存在価値を失っていただろう、そう思わせるほどで、しかも、ライヴということを考慮すれば、まさに空前にして絶後であろう。
このセットでは最も古く唯一の戦前の録音になるのがCD6の『リエンツィ』序曲で、やはりヒス・ノイズと経年による音質の劣化は明らかだ。
第1集と共通のオーソドックスなジュエルケースに6枚のCDが収納されていて、コレクション仕様とは言えないが、新しいリマスタリング盤をリーズナブルな価格で提供しているのがこのシリーズの魅力なので引き続き続編にも期待したい。
ライナー・ノーツは11ページほどで演奏曲目一覧とローター・ブラントによるムラヴィンスキーのキャリアが独、英語で掲載されている。
彼らの代表的録音は複数のレーベルからSACD化されているが、幅広いレパートリーを気取らずに鑑賞できるセットとして、特にムラヴィンスキー・コレクターの方にお薦めしたい。
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