2017年07月04日
ヴァント円熟期のライヴ音源33枚のリイシュー盤
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このセットは当初コリア・バージョンでリリースされたが、一般的にコリア版はセット物の価格がかなり高めになる傾向にあるので、限定盤ながらバジェット価格にプライス・ダウンされたことは評価したい。
同じくギュンター・ヴァント生誕100周年記念として出されたセッション録音が中心になる28枚及びヘンスラーからのミュンヘン・フィルハーモニーとのライヴ8枚と並んで、彼の至芸を鑑賞するための基本的なコレクションになり得るだろう。
これらのセットの共通点は収録曲目で、いずれも彼が最も手の内に入れていたゲルマン系の作曲家の交響曲集になるが、ここでは彼の手兵北ドイツ放送交響楽団に加えて後年盛んに客演を始めたベルリン・フィル及びシカゴ交響楽団との協演が注目される。
総てがライヴ音源だが1回採りではなく、隣接する日付のコンサートからヴァント自身がテイクを選択して、より完璧と思えるリカップリングを試みたようだ。
その意味では一晩に収録されたライヴ録音とは異なるが、彼の場合本番で即興性を発揮するタイプではなく、むしろ全く揺らぐことのないテンポ設定の中に音楽的造形を洗練していく指揮者なのでこうした方法も理解できる。
尚放送用ライヴに関してはプロフィールから20枚のセットもリリースされている。
ヴァントの指揮法を理解するポイントは彼のスコアへの分析の周到さにあると言えるだろう。
彼はオペラ上演のための下稽古として歌手達に音楽を記憶させるピアニスト、コレペティトーレとしてキャリアを始めている。
おそらくその時代からそれぞれの作曲家が作品を効果的に構成するためにどのような手段を用いたかを誰よりも敏感に感じ取り、またそれを精緻に解析していたに違いない。
それゆえヴァントの指揮には音楽がどう展開するか予想がつかないような即興性やスリルを求めてもそれほど意味はないが、全く無駄のないシェイプアップされた堅牢な構成美と非凡なオーケストラのダイナミズムから醸し出される独特の緊張感に価値があるのではないだろうか。
それは彼のレパートリーが後年ゲルマン系の作曲家の作品に収斂していったことからも証明されている。
逆に言えばそうした下準備があまり意味をなさないラテン系の作品は彼の守備範囲から外されていくことになる。
ブルックナーの交響曲でも故意に荘厳なサウンドの効果を狙ったりスケール感を必要以上に誇張するような手法は一切避け、スコア自体に語らせる潔さがあるが、そこに古臭さや陳腐さは全く感じられず、むしろ意外な新鮮さを発見できるのも事実だ。
ヴォルフガング・ザイフェルトによるヴァントへのインタビューが35分程度入っている。
音質は極めて良好だが残念ながらライナー・ノーツは省略されている。
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