2017年07月06日

ケッケルトSQのベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集


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1940年にプラハ・ドイツ・フィルハーモニー管弦楽団がナチス占領下のプラハで、ヨゼフ・カイルベルトを首席指揮者に据えて活動を始めた時、このオーケストラから派生したチェコ・ドイツ弦楽四重奏団も誕生した。

この四重奏団のメンバーである、ルドルフ・ヨーゼフ・ケッケルト、ヴィリー・ビュヒナー、オスカー・リードル、ヨーゼフ・メルツの4人は、プラハ・ドイツ・フィルハーモニー管弦楽団の、それぞれ首席奏者だった。

この四重奏団は1941年に第1ヴァイオリンを弾いていたケッケルトの名前を取ってケッケルト四重奏団と改名し、活動を仕切り直したという。

その後、1965年に第2ヴァイオリンのビュヒナーが亡くなって息子のルドルフ・ヨアヒム・ケッケルトが加わり、1975年にヴィオラがリードルからフランツ・シュッセル、その翌年にはチェロのメルツからヘルマール・シュテッヒラーに代わり、1982年に解散するに至った。

そのケッケルト四重奏団が特に輝いていたのが、初代のケッケルト、ビュヒナー、リードル、メルツの4人の時代と言われ、そのオリジナル・メンバーによるベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集は、LP時代にドイツ本流の四重奏団による極め付きとして愛聴されていたものだ。

モノラル音源なので、その音質は昨今のデジタル音源のクリアさを求められないが、この往年のドイツ・グラモフォン仕様の装丁と、ケッケルト四重奏団の名前で飛びつく人たちは、そのような音質面での不満は織り込み済みだろう。

ケッケルト四重奏団は、必ずしも第1ヴァイオリンが主導するような四重奏団ではないのだが、ケッケルトの妙技が殊に印象に残る。

ベートーヴェンの初期の四重奏曲は、勿体ぶったところのないあっさりとした演奏スタイルなのだが、ケッケルトを中心にメリハリをつけているので、推進力がついている。

メルツのチェロもきびきびしていて、ルーティンに陥らない鮮度を常に保っている。

この四重奏団の演奏におけるメリハリが軍隊調にならず、程よい粘り気を持っているのは、ケッケルトの歌い口のバランス加減にある。

中期の「ラズモフスキー・セット」、「ハープ」、「セリオーソ」も、四者四様の駆け引きがごく自然な会話のように展開する。

作品の相貌に合わせてダイナミックに強弱をつけているにも拘らず、それぞれのパートが如何なる局面でも一切お互いの邪魔になっていない。

無論、こうした駆け引きは四重奏の基本なのだが、このケッケルト四重奏団を基本に考えると、現代の四重奏は、いかにも上手に駆け引きしているのを自慢しているような風があって、この四重奏のような日常会話のごとく演奏する境地に達していないと感じられる。

後期のベートーヴェンの四重奏曲は、かなり入り組んだアンサンブルで、大方の四重奏団は気を引き締めて仕事に取り掛かるのだが、ケッケルト四重奏団は、そうした気負いを捨て、無心の境地で複雑なアンサンブルを楽しんでいる。

結成して15年のアンサンブルが、こうした高みのあるアンサンブルを実現しているのは、驚異的ではなかろうか。

音質を除けば、プロフェッショナル、アマチュアを問わず四重奏団員の誰しもが羨むアンサンブルである。

ドイツ・グラモフォンは、しかるべき企画力をもって、この音源をもっと販促して世界中の好楽家たちの目に触れるようにするべき。

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classicalmusic at 00:43コメント(0)ベートーヴェン  

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