2017年07月30日

リヒテルとモーツァルトの関係


この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。



フィリップスのライヴ音源から蒐集されたCD2枚分のモーツァルト作品集で、リヒテルはあるインタビューの中で語っているが、古典派の作曲家の中ではモーツァルトよりハイドンを好んで取り上げた。

それはコンサートのプログラムに組み入れる曲目としてはハイドンの方がまだ開拓の余地が残されていて、よりフレッシュな感覚で弾くことができたからだろう。

彼にはピアニストであれば誰でも演奏する曲は避ける傾向にあったことも疑いない事実だ。

しかし彼のディスコグラフィーを見ると皮肉にもモーツァルトの方が圧倒的にハイドンを凌駕している。

意外にも珍しいリヒテルのモーツァルトの第一印象は、極めてフランクな演奏だということで、興に乗っていく様がよくわかる。

そして彼が1度モーツァルトを演奏すると、やはり他のピアニストとは異なったリヒテル特有の創意工夫や表現があり、決してモーツァルトを敬遠していたわけではないことが理解できる。

幸いこのセットでは異なったピリオドに収録された5曲のソナタと『ファンタジア』ハ短調を巨匠の巧みな解釈で鑑賞することができる。

何よりも聴きものはソナタヘ長調K.280で、単純な譜面から何と豊かな表現を取り出すことか。

第1楽章のしっかりした構成感と対照的なテンポを落として深みのある抒情を歌い上げる第2楽章、そして終楽章の小気味良く洗練されたテクニカルなピアニズムは、リヒテルの大曲を聴いたことのある人には意外に思われるほど、むやみにスケールを大きくしたり、尊大になることのない真摯で控えめな演奏だ。

しかもそれは、全てが自発性に満ちた表情を湛え、リヒテルならではの味わい深いモーツァルトである。

またソナタ変ロ長調K.333には常套的なサロン風の洒落っ気はそれほど感じられないが、気品を湛えた自然な表現が美しい。

またもうひとつのヘ長調のソナタK.533では考え抜かれた音色の扱いと愛らしさが聴きどころだろう。

2曲のハ短調の作品はリヒテル晩年の瞑想的で、しかもオーケストラを髣髴とさせるドラマティックな奏法の腕が冴えた、全曲中でも最も聴き応えのある作品に仕上がっている。

かっちりと、玲瓏と、誰しもそう弾きたいと望むところを楽々と実現してゆくかのようなリヒテルの力量が伝わる、大変冴えた演奏である。

リヒテルは技術的に完璧なセッションを残すことより、聴衆の前で演奏するライヴに賭けた潔い音楽家だった。

こうした彼の姿勢はその他の多くの演奏家の安易な録音に対する警鐘でもあり、音楽鑑賞のあり方についても示唆的だ。

このCDではライヴ特有の客席の若干の雑音や拍手が入っているが、音質は極めて良好だ。

尚このシリーズの欠点は録音データが不正確なことで、ここに個人的に調べた音源を記しておきたい。

1枚目の3曲、ソナタヘ長調K.280、同変ロ長調K.333及び同ト長調K.283はいずれもザルツブルクで1966年1月28日及び30日、2枚目のソナタヘ長調K.533/494はイタリアのコモで1989年2月10日、『ファンタジア』ハ短調K.475とソナタハ短調K.457はシュトゥットガルトのルートヴィヒスブルクで1991年10月15日のそれぞれのライヴから収録されている。

ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング



フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室



classicalmusic at 00:01コメント(0)モーツァルト | リヒテル 

コメントする

名前
URL
 
  絵文字
 
 
メルマガ登録・解除
 

Profile
Categories
Archives
Recent Comments
記事検索
  • ライブドアブログ