2017年11月11日

本家から廉価盤化されたヴァルヒャの偉業、バッハ・チェンバロ作品集13枚


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昨年ワーナー・コリアから同様の全集がリリースされたが、一般的にコリア盤は価格がミドル・プライス止まりでボックスになるとかなり高く、手を出しにくいのが欠点なので、今回の本家からのリイシュー廉価盤化は大いに歓迎したい。

収録曲はヘルムート・ヴァルヒャがEMIに録音したバッハのチェンバロ・ソロ用の作品集13枚で、彼がアルヒーフに入れた第2回目の『平均律クラヴィーア曲集』全曲と4曲の『デュエット』は含まれていない。

バッハの総てのチェンバロ曲を網羅したものではないが、選曲は極めて正統的でヴィヴァルディからの編曲物や初期の習作類は除外して、その核になる作品を全部揃えている。

これはヴァルヒャによる第2回目のバッハ・オルガン音楽全集の制作と同時進行していた時期の演奏で、彼がこの頃公開演奏や後進の指導と並んで如何に精力的なレコーディングを行っていたかが理解できる。

ヴァルヒャは音楽の基礎をバッハのオルガン音楽に置いた巨匠であることは言うまでもないが、それぞれの声部が織り成す対位法を少しの濁りもなく、明瞭に聴かせる彼のテクニックはチェンバロ演奏においても全く揺るぎない。

必要以上の感情移入や表現上の誇張、レジスターの濫用やテンポの恣意的な変化などが一切ないごくシンプルな奏法が貫かれているために、彼の演奏を聴いているとバッハが書き記した自筆譜の1ページ1ページが次々と目の前に現れてくるような印象がある。

ただし音楽の内側に向けられる情熱とその集中力には尋常でないものがあり、それが特に『平均律』全曲や『ゴールドベルク』などの長丁場の曲目に発揮されていて作品の長さを感じさせないばかりか、大伽藍を築くような曲の構成美を感知させて聴く者を圧倒してしまう。

ヴァルヒャは19歳の時にバッハの総ての鍵盤音楽の暗譜を決意し、40歳の誕生日には早くもこの遠大な計画を成し遂げた恐るべき記憶力の持ち主でもある。

まだ点字楽譜がなかった時代に母親や夫人の弾く一声部ずつを記憶して、それらを頭の中で再構成して覚えるという信じられないような離れ技をやってのけた。

彼の弾く声部の明晰さと結晶のように純粋で堅牢な音楽はこうした努力から生まれたものに違いない。

このセットに収録された第1回目の『平均律』は壮年期の覇気に満ちていて、再録音に比較して速めのテンポ設定になっている。

また『イタリア協奏曲』『半音階的幻想曲とフーガ』『フランス風序曲』を収めた1枚ではその豪快な奏法も堪能できる。

これら一連の演奏にヴァルヒャが使用した楽器は例外なくアンマー製のモダン・チェンバロで、最も新しい録音でも1962年なので、古楽黎明期をこれから迎えようとしていた時代であることを考慮すれば無理もないが、楽器の選択は妥当と言える。

アンマーは当時のモダン・チェンバロの中では柔らかく潤沢な響きを持っていて、表現力も豊かで声部の保持にも優れている。

ヴァルヒャは決してレジスターを濫用しなかったが、ここぞという時に効果的な音色の変化を聴かせているのも名人芸のひとつだ。

彼はより複雑なオルガン曲でのレジスターの組み合わせは生涯明かさなかったらしいが、こうしたところにも彼の演奏への秘訣があるのだろう。

晩年になってヴァルヒャはバッハの6曲のチェンバロ・オブリガート付ヴァイオリン・ソナタと2度目の『平均律』全曲録音にヒストリカル・チェンバロを使っている。

その気品に満ちたオリジナルの響きはモダン楽器とは比べるべくもないが、いずれにせよ彼がこれだけのチェンバロ用作品の録音を遺してくれたことに感謝したい。

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classicalmusic at 19:44コメント(0)バッハ | ヴァルヒャ 

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