2017年11月16日
コンドラシンの芸術、ヴェニアスからの9枚
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旧ソヴィエトからの亡命指揮者キリル・コンドラシンのオーケストラル・ワークはメロディア・レーベル以外にも西側でのRCAやデッカに貴重な音源が遺されている。
指揮者としてはまだこれからという時期に67歳で突然死した彼の死因についてはソヴィエト当局がらみの暗殺説もあるようだが、それまでの精力的な演奏活動の中には決定的な名演も少なからず存在する。
この9枚は過去にリリースされた複数のレーベルへのセッション、ライヴからピックアップされ、スラヴ物は勿論ラテン系、ゲルマン系の作品への優れた解釈を俯瞰することができる殆んど唯一のセットだ。
ただし彼にとって最も重要なショスタコーヴィチが組み込まれていないので交響曲全集についてはヴェネツィア・レーベルの12枚組が必聴盤だろう。
ここでもオーケストラを厳格かつ精妙に扱いながら表出する深い抒情を湛えたリリシズムや漲る高揚感にはコンドラシンならではの手法が横溢していて、ファンであれば聴き逃せないレパートリーがまとめられている。
CD1のラヴェルやドビュッシーでは精緻だがいくらか雰囲気が厳し過ぎて、フランスの音楽特有の遊び心がもう少し欲しいところだが、CD2の2種類のラロのスペイン交響曲では非常に均整のとれた構成感が感じられる。
またトラック1から4の演奏はソリストにコーガンを、CD1のフランクの交響詩『鬼神』ではリヒテルを迎えていて、彼らの貴重な協演も聴きどころだ。
コンドラシンの得意としたミャスコフスキー、カセッラやシチェドリンなどの20世紀の作品も少なからず収録されている。
その中でもモノラルながらカセッラには彼の先鋭的な感性が反映されているし、プロコフィエフの『古典』は機知に富んだ快活さがひときわ心地良い。
CD6はRCAリヴィング・ステレオの1枚としてリリースされたものだけに、1958年のセッションだが鮮明なステレオ録音で、スラヴ系作曲家達の才気煥発のアルバムになっている。
リムスキー=コルサコフの『スペイン奇想曲』フィナーレでRCAヴィクター交響楽団のブラス・セクションを極限まで咆哮させる迫力もアメリカのオーケストラの面目躍如だ。
最後のラフマニノフはスペクタクルな表現にも見事な手腕をみせたコンドラシンの指揮者としての多彩さを示している。
例によってヴェニアスのボックス・セットにはライナー・ノーツもなければ、MADE IN EUの表記の他にはリリース元のサイトや住所も書かれていない。
しかし実際にはヨーロッパ市場には全く出回っていない商品なので日本人向けのレーベルであることが想像される。
特に新しいリマスタリングの表示はなくモノラル、ステレオが混在していてボリューム・レベルも録音によってかなりの差があることは否めないが、音質は良好で興味深い企画とコストパフォーマンス的にもリーズナブルなのが嬉しい。
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