2017年11月29日
プレガルディエン、シュタイアーのコンビによる4枚のロマンティック歌曲集
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ドイツのテノール、クリストフ・プレガルディエンはレオンハルトと協演したバッハの受難曲のエヴァンゲリスト歌いとして一躍名声を得た。
その真摯な歌唱と癖のない柔軟な表現力が特に宗教曲のジャンルで評価されたことが理解できる。
確かに彼の声質は官能的とはいえないが決して融通性のない禁欲的なテノールではなく、ここでの多くのロマンティックな歌曲集も実にスマートに、しかも特有の透明感のある声で清々しく表情豊かに歌い上げている。
例えばシューベルトの『美しき水車屋の娘』やシューマンの『詩人の恋』での、若者の青春の息吹きと失恋の深い痛手が曲を追うごとに伝わってくる精緻で頭脳的なアプローチは流石だ。
プレガルディエンは思い入れたっぷりに歌うタイプではなく、基本的にピリオド唱法でのヴィブラートを抑えたすっきりした表現の中に、かえってモダンな感性が窺える。
もうひとつの特徴は古楽学者でピリオド鍵盤楽器奏者のアンドレアス・シュタイアーが伴奏にフォルテピアノを使っていることである。
当然彼らはピリオド・スタイルの再現を試みているが、実際に響いてくるサウンドは決して色褪せたセピア調のものではなく、むしろそこにリリカルな瑞々しさや詩の要求するかなりドラマティックな表現も可能にしている。
彼らの演奏を聴いていると、往時のシューベルティアーデの一晩が再現されたような雰囲気がある。
ドイツ・リート演奏に対するひとつの新しい方向性を示したサンプルとしても秀逸。
この4枚のCDは1991年から94年にかけて録音され、これまで個別にリリースされたアルバムが今回初めて纏められてバジェット・ボックス化された。
ライナー・ノーツには全収録曲と録音データのみの記載で歌詞対訳は省略されている。
幸い上記アマゾンのページでも収録曲目を一覧できるので参照されたい。
尚使用されたフォルテピアノだがCD1及び2はヨハン・フリッツが1818年にウィーンで製作したハンマーフリューゲルをクリストファー・クラークが1981年にコピーしたもので、CD3は同じ製作者の1825年のオリジナル楽器を修復したもののようだ。
最後のCDもやはりヨハン・フリッツ製作だが1815年のレプリカを使用している。
ピッチは現代よりやや低いa'=430Hz。
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