2017年12月07日
祖国愛に恥じない堂々たる名演、スメターチェク、チェコ・フィルによる『我が祖国』
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ヴァーツラフ・スメターチェク(1906-86)は、1942年から72年の長期間に亘ってプラハ交響楽団の首席指揮者だったが、かつてはチェコ・フィルハーモニーのオーボエ奏者だったこともあり、彼が古巣に帰っての最後の客演がこの『我が祖国』になった。
このスプラフォン音源は日本でも独自のリマスタリング盤がリリースされているが、マスター自体が極めて良質なステレオ・ディジタル録音であるためにダイレクトなサウンドが活かされたスプラフォン盤での鑑賞を先ずお薦めしたい。
確かに高音は非常に鮮明で奥行きを感知させる分離状態も良好だが中低音にいま少し厚みが欲しい。
また音量レベルがやや低くボリュームを上げて再生することが望ましいが、音量をアップしても音質に破綻はない。
ケース裏面に表記されているように、この音源はチェコ・スプラフォンが単独で行った最初のPCMディジタル録音で、エンジニア達がまだ技術的な試行錯誤を重ねていた時代と、あくまでもLPレコード用だったことを考慮すれば当時のハイテクが反映された歴史的録音であることには違いない。
スメタナの連作交響詩『我が祖国』は哀愁を帯びた親しみ易いメロディーと美しい抒情性からどうしても第2曲「モルダウ」に注意が向けられる。
スメターチェクの演奏の重心は後半のフス戦争での信徒達の果敢な戦いとチェコの栄光が高らかに歌い上げられる「ターボル」と「ブラニーク」に置かれていて、他の部分は終曲に向かって収斂していくクライマックスを築くためのエレメントのように聴こえてくる。
この作品はチェコ・フィルによってその伝統的なスピリットが受け継がれながら毎年『プラハの春音楽祭』のオープニングに常に演奏され続けてきた。
スメターチェク盤でも例外なく強い印象を残しているのは、彼らが戦後置かれた旧ソヴィエトの圧政に対する祖国愛で、オーケストラの団員達はそこに隠された強い情熱を音楽に託して表現していることがひしひしと伝わってくる。
1972年4月に東京青山タワー・ホールで世界初のPCMディジタル方式による録音が行われたが、その時の演奏はスメタナ弦楽四重奏団によるモーツァルトの2曲の弦楽四重奏曲だったので、その時点から既に日本コロムビアとチェコ・スプラフォンの共同制作が開始されていたことになる。
6年後には旧東独ドイツ・シャルプラッテンも参入していよいよオーケストラル・ワークのディジタル録音が始まるが、1980年に新機材を導入したプラハのルドルフィヌム・ドヴォルザーク・ホールでのチェコ初のディジタル録音がこの『我が祖国』だ。
しかしCDの登場までには更に2年を待たなければならなかった。
この音源がCD化されたのは再生機器の普及という事情もあって1994年のことになる。
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