2017年12月20日
現役最高峰のベートーヴェン指揮者、ブロムシュテット2度目の交響曲全集
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ヘルベルト・ブロムシュテットは既にシュターツカペレ・ドレスデンとのベートーヴェン交響曲全集を完成させていて、このライプツィヒ・ゲヴァントハウスとのセットは彼がここ数年間で成し遂げた2度目の録音になる。
ブロムシュテットは現在90歳でスクロヴァチェフスキ亡き後のクラシック楽壇でも最長老だが、また現役の中では最高峰のベートーヴェン指揮者と言っても過言ではないだろう。
彼は1975年から85年までの10年間はシュターツカペレ・ドレスデンの、そして98年から2005年まではゲヴァントハウス管弦楽団のカペルマイスターに就任していたので、今回の全集も自ら鍛え上げた手兵を見事に統率した演奏がいわゆる客演とは一味も二味も異なった、細部まで練り上げられた緻密さと地に足の着いた安定感を持っている。
確かに個性を前面に出したスリルに満ちた演奏ではないが、テンポは概して快速で、その推進力に生命感が漲っている。
また管弦共にヴィブラートを抑制したピリオド奏法を採用しているために和声の進行も一層明瞭に感知できる。
ライプツィヒがまだ旧東ドイツの都市だった頃のゲヴァントハウスのコンサートでマズアによるベートーヴェンの第8番を聴いたことがある。
洒落っ気のない素朴な音色だったが強力に統率されたパワフルな響きに驚かされた。
その時にベートーヴェンのあるべき演奏の姿を知らされた思いだった。
今では楽員のグローバル化も進み、また音色も随分洗練されているが、新しいこの交響曲全集を聴いても飾り気の少ない重心の低さが如何にもゲヴァントハウスらしい。
前任者クルト・マズアとも全曲録音を行っているが、ブロムシュテット自身も長期間に亘って旧東ドイツのふたつのオーケストラを任された経験から、楽団の持っている伝統的なスタイルを熟知している。
彼はオーケストラの配置にチェロを中央に据えて第2ヴァイオリンを上手に置く両翼型を常套的に採用しているが、これはメンデルスゾーンがゲヴァントハウスのカペルマイスターだった時にその原型が形成されたようだ。
これによってベートーヴェンのオーケストレーションの妙味も明らかにされている。
音質は鮮明で分離状態も良好だが、低音部がかなり豊かに響いているのは録音会場の音響の特質かもしれない。
例えば交響曲第9番第2楽章スケルツォでのティンパニ・ソロの深く重厚な響きには圧倒される。
4人のソリストを合唱団と同列のオーケストラの後ろに配置しているのも特徴的で、声楽の突出を避けたバランス感覚も独自のものがある。
ただしテノールのエルスナーはいくらか影の薄い存在だ。
現在のゲヴァントハウスは1981年にオープンした三代目のコンサート・ホールで、ライプツィヒ歌劇場と並んで新時代を象徴するようなモダンな建築様式によるライプツィヒのクラシックの殿堂になっている。
尚このセットは横からスライドして引き出すカートン・ボックスの中に、それぞれが見開きのダブル・ジャケット4つに5枚のCDを挿入したコレクション仕様で、ブロムシュテットのスナップや演奏会場となったゲヴァントハウス大ホール内部の写真が掲載された独、英、仏語による70ページの充実したブックレットが付いている。
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