2017年12月24日
唯一のステレオ・セッション録音、ケンペの『ザ・グレイト』
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ルドルフ・ケンペが指揮したシューベルトの交響曲のレコーディングは第8番ロ短調『未完成』及び第9番ハ長調『ザ・グレイト』の2曲がある。
後者はライヴは別としてセッション録音に関して言えば、この1968年のミュンヘン・フィル以外のオーケストラとの共演ではシュターツカペレ・ドレスデンとの1950年のモノラル録音が存在する。
その間には18年の隔たりがありケンペ自身の解釈にも変化がみられるが、当ディスクが圧倒的に優位に立っているのが音質で、当時1968年のドイツCBSの録音技術の水準の高さが示されている。
広めの音響空間で再生するのであれば鮮明なサウンドが広い音場の中で開放され、ブラス・セクションの迫力も充分で臨場感に溢れている。
また分離状態も極めて良好で両翼型配置のふたつのヴァイオリン・パートも手に取るように明確に聴き分けることができる。
ケンペの解釈は飾り気こそないが、堅牢で堂々たる正面切った力強い演奏で、第2楽章でのシューベルト特有のリズミカルな伴奏に乗った歌心の表出にも不足していない。
尚この音源は数年前にSACD化もされたが、残念ながら既に生産終了している。
一方R.シュトラウスの『メタモルフォーゼン』の方は5年後1973年のシュターツカペレ・ドレスデンとの良好なステレオ録音のリマスタリング盤がワーナーからリリースされている。
室内楽的な静謐な開始と次第に高揚を迎える豊かなダイナミズムが効果的で、先ずそちらの鑑賞をお薦めしたい。
このミュンヘン・フィル盤はより熱っぽくエネルギッシュな演奏だが、曲想に伴う微妙な変化ときめ細かい表現という点では前者に一歩譲っている。
こちらの音源もやはりDSDリマスタリングされたもので、音量のボリュームが上がり高音の伸びも以前のCDに比べると改善がみられる。
ケンペが独CBSに遺した音源のオリジナルLP盤は4枚ほどあり、このCDに収録されている2曲の他にネルソン・フレイレをソロに迎えたシューマン、グリーグ、チャイコフスキーの3曲のピアノ協奏曲とリストの『死の舞踏』、ドヴォルザークの『弦楽セレナーデ』だが、纏まったセット物のCD化は企画されていない。
晩年のケンペはR.シュトラウスとベートーヴェンをEMIに、ブラームスは独バスフに、チューリヒ・トーンハレを指揮したブルックナーはスイスのエクス・リブリス(チューダーからのリリース)に、更には米リーダース・ダイジェストにもドヴォルザークの『新世界』を中心とするCD3枚分の一連のセッション録音を行った。
そのために版権の関係からこれまで単一のセット物としては纏められることがなかったが、2015年にようやっとスクリベンダムが異なったレーベルからの10枚を纏めてリリースした。
他のCBS音源もリマスタリングでの復活を期待したい。
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