2017年12月26日
ヨゼフ・スーク、ヴィオラとヴァイオリン・ソロによるベルリオーズ
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チェコのヴァイオリンの名手ヨゼフ・スーク(1929-2011)がソロを弾いたベルリオーズの2曲のオーケストラル・ワークを収録したディスクで、どちらも充実した管弦楽曲でもある。
スークはまた室内楽においてもしばしばヴィオラのパートにまわったほど、この楽器に愛着を持っていた。
ソロでもブラームスのクラリネット・ソナタのヴィオラ版をパネンカと、そしてバッハのガンバ・ソナタをヴィオラで演奏したものをルージィチコヴァーとの協演でスプラフォンからリリースしている。
この『イタリアのハロルド』でも彼の継承するプラハ・ヴァイオリン楽派の流麗な奏法がヴィオラにも余すところなく示されている。
彼がヴァイオリンを弾く時と同様の薫り立つような音色が官能的で、この曲の文学的なストーリーを追ったものではないかも知れないが、極めて純粋な音楽的解釈だ。
フィッシャー=ディースカウの指揮者としての力量だが、カップリングされたスメターチェクと比べられては流石に分が悪いのは確かで、しかもベルリオーズの作曲技法に凝った華麗で色彩豊かなサウンドを具現するにはいまひとつ至っていないが、この大曲のツボは押さえていてチェコ・フィルも敬意を表して呼応しているというのが事実だろう。
ちなみにこの作品はベルリオーズがバイロンの長編詩『チャイルド・ハロルドの巡礼』にインスピレーションを得たものだが、原作との関連性は稀薄で、作曲者自身のイタリア留学中の体験をベースにしてファンタジーを膨らませた創作性が強く表れている。
それは彼の交響曲『幻想』と良く似ていて、結果的には彼が最も力を注いだ標題音楽の代表作のひとつになった。
パガニーニ発注説の真偽はともかくとして、ヴィオラ奏者の最も重要なレパートリーであることは間違いない。
一方『夢とカプリース』はベルリオーズが自身の歌劇『ベンヴェヌート・チェッリーニ』のテレーザのカヴァティーナをピックアップしてヴァイオリンと管弦楽のためのロマンスとして仕上げた曲だが、協奏曲を1曲も書かなかった彼にとって、『ハロルド』と共にソロ楽器を伴った稀な作品だ。
いずれにしてもソロが超絶技巧を発揮する見せ場やカデンツァはないので、いやが応でも演奏者の音楽性が問われることになる。
ここでもスークの甘美だが決して耽美的にならない抑制を効かせたカンタービレが聴きどころだ。
スメターチェク指揮するプラハ交響楽団のサポートは万全で、ベルリオーズのオーケストレーションの巧妙さを感知させながらスークのソロを引き立てている。
尚彼らはオーケストラ付のヴァイオリンのための一連の小品集を録音していて、スプラフォンからスークのロマンス集としてリリースしている。
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