2017年12月28日
自然体で珠玉のように美しいスークの無伴奏、UHQCDでの久々の復活
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ヨゼフ・スークが1970年に録音したバッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全6曲を収録した2枚組のUHQCDになり、長い間製造中止になっていた音源が日本のリマスタード盤として復活したことを評価したい。
ヴァイオリニストにとってバッハの無伴奏は避けて通れないレパートリーのひとつだが、スークは全曲演奏を一度しかレコーディングしなかったので、彼の唯一のしかも最も充実した壮年期の記録としても貴重なサンプルだ。
この時代のEMIの録音としては比較的ボリュームのあるしっかりした音質で、程好い残響の中に臨場感に富んだ濁りのない清澄なヴァイオリンの音色が収録されている。
これは新規のリマスタリング及びUHQCD化との相乗効果かもしれない。
確かに古いアート・リマスター盤と聴き比べるとかなりの音質の向上が感知される。
スークの解釈は、バッハ演奏の伝統と言える作品の精神性をしっかりとふまえたものだ。
アッカルドのようにことさらヴァイオリンのカンタービレを屈託なく謳歌するようなものではなく、ましてやシェリングのようにバッハの音楽の崇高さを世に知らしめんという高邁な使命感に衝き動かされたものでもない。
しかし彼の演奏には持ち前の美しい音色を犠牲にすることなく、ごく自然体で中庸をわきまえたシンプルさと、ポリフォニーの音楽を一挺のヴァイオリンで精緻に再現するための普遍的な方向性を示したところに特徴がある。
それゆえスケールは決して大きくないが、バロック音楽に造詣の深い彼だけあってヴィブラートの多用や恣意的な感情移入を避けてバッハの対位法をひときわクリアーに再現しようと試みていることが注目される。
それぞれの楽章の性格をしっかりとらえ、格調高いスタイルでバッハの隠されたポリフォニーを紡ぎあげていくスークの演奏には、自由な息吹きと内面的な世界の深さとが表裏一体となって息づいている。
しかも落ち着きのある輝きをもった響きが、バッハの作品の偉大さをいやがうえにも印象づけるのだ。
尚使用楽器についてライナー・ノーツでは言及されていないが、この頃のスークの使用していたヴァイオリンは1710年製のストラディヴァリウス『レスリー・テイト』なので、この録音でも彼がこの名器を弾いていることが想像される。
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