2017年12月30日
スーク、パネンカのコンビによる颯爽としたベートーヴェン
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スークとパネンカによる「ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ」全集は、1969年のレコード・アカデミー賞に輝いた名盤。
2012年にスプラフォンからリイシューされたリマスタリング盤で、音質に磨きがかかったことで、ベートーヴェンの抒情性が更に前面に出た極めて美しい演奏を評価したい。
スークとパネンカの名コンビによるこの演奏は、素晴らしいアンサンブルを聴かせる。
スークのヴァイオリンは、すこぶる繊細で、甘美な音色をもっており、パネンカのピアノも実に安定していて品位が高い。
作曲家の音楽の構築性や哲学的な深み、あるいはドラマティックな力強さという観点から鑑賞するのであれば、彼らより優れたヴァイオリン・ソナタ集は存在する。
例えばスークとほぼ同時代に活躍したオイストラフの演奏を思い出すことができるだろうし、シェリング、ルービンシュタインの選集もあり、またグリュミオー、ハスキル盤は彼らの中では最もロマンティックな演奏かも知れない。
スークはプラハ・ヴァイオリン楽派を継承する流麗な奏法を身上としているし、パネンカもいわゆる美音家である。
2人がその音色を活かす表現に傾倒するのは当然で、いわゆる巨匠型の演奏家ではないが、力量と総合力の高さを持っている。
しかしこのソナタ集が単に美的感覚だけでは捉えられていないことは、第7番ハ短調や第9番『クロイツェル』の劇的な解釈を聴けば納得できるだろう。
また彼らには以前の美音を誇ったヴァイオリニスト達にありがちだった耽美的な古臭さは微塵もなく、むしろ抑制された現代的で新鮮なセンスで曲想を把握し、洗練された趣味と音色で歌い上げていく颯爽とした感覚が魅力で、若い人たちには好まれよう。
第5番『春』では、そうしたスークの持ち味が充分に生かされていて良い出来だし、アンサンブルも緊密で、中でも緩徐楽章でのスークの瑞々しいカンタービレにパネンカの濁りのない澄み切ったピアノの音色が溶け合って聴き手を陶酔させるような表現も巧みだ。
同じチェコ出身のこのピアニストの端正で隅々まで行き届いた潔癖ともいえるピアニズムは称賛したい。
つまり、このコンビは逞しさや情熱よりも、端正な演奏が身上なので、ベートーヴェンの抒情を歌い上げて、清楚な点ではトップ・クラスの演奏だし、ひと味違ったベートーヴェンに接することができる。
1966年から翌67年にかけてプラハのスプラフォン・ドモヴィーナ・スタジオでのセッション録音で音質は極めて良好。
スークはやはり同郷のチェンバリスト、ズザナ・ルージィチコヴァーと組んでモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ選集も同スプラフォンからリリースしている。
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