2018年01月05日
フルトヴェングラーによる2種類のブルックナー第8番
この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。
プラガ・ディジタルスから続々とリリースされているフルトヴェングラーのハイブリッドSACDも既に12枚になるが、同ディスクは2枚組でウィーン・フィルとの1944年及びベルリン・フィルとの1949年録音のブルックナーの交響曲第8番をそれぞれ1枚ずつに収録している。
彼の指揮した同曲は4種類の音源が知られていて、ウィーン・フィルを振った1954年4月10日のライヴが最後になるが、このセットの2枚はどちらも放送用録音で、レコーディング状態が安定していて幸い煩わしい客席からの雑音からも解放されている。
フルトヴェングラーの場合はリマスタリングによってどれだけ音質が改善されるかが鑑賞時のひとつのポイントになる。
戦前から戦後にかけての1940年代の録音なので音質に関しては期待していなかったが、比較鑑賞するためにはそれほど苦にならない程度のサウンドが再生されるのは思わぬ収穫だった。
特に後者は擬似ステレオながら、リマスタリング効果もあってかなり鮮明な楽器の音色が甦って、ある程度の奥行きを伴った臨場感にも不足していない。
ただ双方に共通する弱点は総奏部分になると再生しきれない箇所があることだが、それは音源自体に由来するもので改善の余地は期待できないだろう。
両セッション共に1939年のハース版をもとにフルトヴェングラー自身が手を加えたスコアが使用されていて、作品への大きな解釈の変更はない。
演奏時間もトータルでウィーン・フィルが77分04秒、ベルリン・フィルが76分55秒で大差はないが、若干楽章ごとの揺れがあり第3楽章ではウィーン・フィルの方がやや遅く、全体的なトーンも落ち着いている。
フルトヴェングラーのブルックナーは個性的でスケールの大きい表現だが、あまりにもロマン的で、ブルックナーの素朴さよりもフルトヴェングラーの音楽を聴く感が強い。
それでもこの指揮者の芸術的ルーツが、ブルックナーと同じところにあることを理解できる自然体の表現であり、そこに演奏の魅力もあるのである。
ウィーン・フィルとの演奏はフルトヴェングラーが若々しい気迫に満ちた音楽を聴かせ、アゴーギクとデュナーミクを巧みに融合させた効果はまさに名人芸と言わねばなるまい。
ベルリン・フィルの方はよりパワフルで唸りを上げて迫り来る怒涛のような勢いだが、それはむしろヨーロッパの2大オーケストラの創り出すサウンドの違いを熟知していたフルトヴェングラーが、彼らの特質を活かしながら演奏した結果のように思われる。
いずれにしても大戦末期のウィーンで、国威高揚のための放送用音源であったとしても、こうしたレコーディングが平然と行われていたことは驚異に値する。
ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング
フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室。