2018年01月12日

エガーが満を持して挑んだ初稿版『マタイ受難曲』


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リチャード・エガーはここ数年でいよいよバッハの大規模な宗教曲に取り組み始めたが、その第一弾が『ヨハネ受難曲』で、彼が温めてきたバッハの宗教音楽への構想を着実に実現したものだった。

それに続いて2014年に録音されたこの『マタイ受難曲』もピリオド・スタイルを踏襲した古楽アンサンブルの中では将来においても優れたサンプルになるべき価値を持った演奏だ。

他のピリオド・アンサンブルと異なっているのはバッハが1727年4月11日の聖金曜日にライプツィヒ・トーマス教会で初演した当時の初稿を再現した演奏で、通常では1736年の最終稿が採用されるが、エガーは「改訂稿などの以降の版からは数々の洞察力と説得力が失われてしまった」と考え、敢えてバッハが初めてこの曲を構想した時のスピリットに立ち返って、改訂によってより壮麗な曲想になる以前の原点を模索したものだ。

これは先行する『ヨハネ受難曲』と同様のコンセプトに基いていると言えるだろう。

パート編成上の目立った違いは第1部冒頭で二重合唱の上に響くユニゾンのソプラノ・リピエーノのパートに少年のコーラスを使っていないことや、バッハが初稿で使ったとされるリュートを取り入れてCD3トラック3で歌われるバスのアリア『来たれ、甘き十字架』の伴奏にはヴィオラ・ダ・ガンバのオブリガートの替わりにリュートとオルガンを当ててソフトだが神秘的な雰囲気を出していることなどだ。

尚コーラスの編成は第1、第2合唱共にソプラノとバスが3名、テノール及びアルトが各2名ずつで、彼らも2007年にエガーによって結成された自前の合唱団だ。

エヴァンゲリスト、マタイを歌うジェイムズ・ジルクライストは個性派のテノールではないが、微妙に移り変わる多彩な表現力で物語を進め、受難のストーリーに沿ってある時はリリカルに、またある時はドラマティックに歌う肌理の細かい歌唱が冴えている。

これ以上ないと思われるほどのソリスト、合唱、そしてアカデミー・オブ・エンシェント・ミュージックの艶やかな響きが織り成す受難の物語は、一見柔らかい表情に見えるが、実は深遠、晦渋であり、クライマックスでは人間の罪深さを鮮やかに抉り出すなど、実に劇的な表現に満ちていることに気がつくのではないだろうか。

演奏時間は3枚のCDを合わせて144'38と速めのテンポを採っているのも特徴だ。

当シリーズはいずれもレギュラー・フォーマット仕様だが音質は鮮明で、古楽器の特性が良く捉えられた臨場感に溢れる音場が得られている。

AAMはそのイニシャルが示すようにエガーとアカデミー・オヴ・エンシェント・ミュージックが自ら立ち上げた彼ら専用のレーベルで、ジャケットはブックレット・タイプでドイツ語の歌詞に英語対訳が綴じ込まれている。

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classicalmusic at 22:41コメント(0)バッハ  

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Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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