2018年01月14日
ギーゼキングのドビュッシー、時代を超越したパフォーマンス
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ギーゼキングの演奏では未だに高い評価とその音楽的価値を失っていないドビュッシーのピアノ作品集の廉価盤化を歓迎したい。
このセットの総てが1951年から55年にかけてのEMIへのモノラル録音だが、その類い稀な解釈から醸し出されるインプレッショニズムの世界は現代の私達をも驚かせずにはおかない限りない幻想的な魅力を持っている。
それはギーゼキングが時代の趣味に囚われない音楽の本質を見極めることができた数少ないピアニストだったことを証明していて、そのことは殆んど同時にドイツ・グラモフォンからリリースされたバッハの演奏集においても明らかだ。
演奏家のスタイリッシュなパフォーマンスが大きく反映されていた時代に、ピリオドもスタイルも全く異なったタイプの作曲家の作品の本質を捉え、独自の奏法を開拓した才能は並外れたものだったと言うべきだろう。
ここにはギーゼキングがEMIにセッション録音した総てのドビュッシーの作品が体系的に収録されている。
彼の印象派の音楽への強い共感とその洗練されたピアニズムを感じさせずにはおかないが、その象徴的な作品集が2巻の前奏曲集だ。
作品の総てに標題が付けられているが、それら1曲1曲に示された多彩で個性豊かな表現力と行き届いたピアニスティックなコントロールは流石だ。
初めてギーゼキングの『帆』を聴いた時の言葉では言い表せない映像的な感覚は忘れ難いものだった。
『沈める寺』での誇張のない、それでいて深みのある幻想性と水中から大伽藍がその壮大な姿を覗かせるようなシュールレアリズム的な高揚感はこの作品ならではの体験だった。
一方で『ベルガマスク組曲』の色彩感溢れるリリシズムや『子供の領分』での機知に富んだ親しみのある表現は古い録音には違いないが、ドビュッシーのピアノ曲を鑑賞するための普遍的なサンプルとして入門者にもお薦めしたいセットだ。
以前SACDバージョンでリリースされた時のリマスタリング盤で、音質はマスター・テープの経年劣化が感じられる部分もあるが概して良好。
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