2018年01月18日

ヘブラーのバッハ、限りなくウェットなロココ風フランス組曲


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フランス組曲には、ピアノによる演奏にも新旧何種類かの名盤・注目盤があるが、その中でも最も印象に残っているのが、筆者の場合意外なことながらこのヘブラー盤である。

ヘブラーとバッハとは、ちょっと珍しい取り合わせのような気もするが、フランス組曲に関する限りはこれがまさに絶妙。

日本ではもはや死語となってしまった「女性的」なしっとりとしたタッチで、聴き手を優しく包んでくれる明快な魅力に満ちた演奏である。

零れ落ちるようなウェットな美音で綴ったフランス組曲で、ヘブラーらしく奇を衒うことのない曲作りの中に気品に満ちた情緒が湛えられている。

そう書くと彼女の弾くモーツァルトの延長線上にあるバッハのように思われるかも知れないが、実際にはモーツァルトとは異なった次元での表現力が発揮された、高度な幻想性を感じさせる貴重な録音だ。

スタッカートを避けた抑制されたピアニズムでありながら鍵盤への洗練された多彩なタッチが極めて美しい、宮廷風ロココ趣味を先取りしたようなバッハの一面も明らかにしている。

それほどレパートリーの多くないヘブラーにとって大バッハの作品ではフランス組曲が唯一の音源になり、彼女がバッハの鍵盤作品から敢えてこの6曲を選んでいるのもそうしたところに理由がある筈だ。

同時代のもう一人のウィーンの大家、イェルク・デムスが彼女に先立つ1974年にバッハのパルティータ全曲とゴールドベルク変奏曲をベーゼンドルファーを弾いて録音しているが、一脈通じるものがあるかも知れない。

モダン・ピアノによる演奏なのでペダルを少なからず使用していることが感知されるが、それぞれの声部は濁ることなく心地良く響いてチェンバロで弾くのとはまた違ったデリケートな潤いを含んでいる。

装飾音の扱い方はバッハの書き記した奏法に遵ずるもので、彼女のバロック奏法への造詣の深さを示している。

タワーレコードからのヴィンテージ・コレクションとして現在91歳の女流ピアニスト、イングリット・ヘブラーの一連の音源が復活しているが、この2枚もそのシリーズの一組になる。

因みに同コレクション・シリーズで彼女のモーツァルト以外の録音ではシューベルトの即興曲集、シューマンのピアノ協奏曲とフランクの交響的変奏曲その他を1枚に纏めたもの、クリスティアン・バッハのフォルテピアノによる協奏曲全曲集、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番及び第4番、シェリングとのヴァイオリン・ソナタ全集が、また廃盤になってしまったがフィリップスからはハイドンのピアノ・ソナタ集とショパン・ワルツ集の19曲がそれぞれCD化されていた。

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classicalmusic at 15:21コメント(0)バッハ | ヘブラー 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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