2018年01月20日

リマスタリングに課題を残したアンチェルの『我が祖国』


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このところ1960年代のアンチェル、チェコ・フィルによる録音を繰り返し鑑賞しているが、新規にリリースされたUHQCDでのストラヴィンスキーの『春の祭典』『 ペトルーシュカ』とショスタコーヴィチの交響曲第5番及び第1番の2枚が素晴らしい仕上がりだったためか、こちらのディスクはいまひとつの印象が否めない。

録音年は1963年なので当時のスプラフォンの録音技術を考えれば西側に匹敵するサウンドが再生される筈だが、鮮明さや楽器ごとの分離状態がややもの足りないというのが正直な感想だ。

シンバルやトライアングルなどのパーカッションの高音の伸びや輝きも他の同時代の録音に比べて精彩を欠いている。

これはバランス・エンジニアのコンセプト云々と言うより、音源自体の持つ弱点かも知れない。

実際レギュラー・フォーマットによる同シリーズのドヴォルザークの交響曲第6番とヤナーチェクの『シンフォニエッタ』及び『タラス・ブーリバ』とも聴き比べたが、やはりこのCDが一番劣っている。

ただリマスタリングによる音質向上の余地は残していると言えるだろう。

本家チェコ・スプラフォンからの40枚を超えるカレル・アンチェル・ゴールド・エディションの第1集を飾った名盤だけに今後に期待したい。

アンチェルによる冒し難いほどの普遍的な高い音楽性と民族的な高揚が止揚された演奏が、多くの人から絶大な支持を得ている理由だろう。

アンチェルの表現は、各曲の持つ標題性よりはむしろ音楽の内面に光を当てているのが特徴で、スラヴ民族の血の躍動を感じさせる。

ことに「シャールカ」と「ブラニーク」の2曲は、その緊迫感と吹きあげるような情熱に圧倒されてしまう。

彼はこうしたお国物でも決して偏狭な民俗主義にのめり込むことなく、作曲家の書き記したスコアから総てを汲み取って音楽に還元する手法を貫いた。

また彼によって鍛え上げられたチェコ・フィルハーモニーの機動力がフルに呼応して、郷土愛を謳歌していることも特筆される。

指揮者と楽員たちとの精神的な結びつきの強さが示された名演奏だ。

彼が亡命直前の『プラハの春音楽祭』のオープニングに彼らと『我が祖国』を演奏した1968年5月12日の映像が残されているが、その三ヵ月後に起こるソヴィエトのチェコへの軍事介入の不吉な前兆が否応なく感じられる緊張感の中で、アンチェルの演奏はひたすら高邁なおおらかさを湛えていて、聴衆の愛国心を一層鼓舞する熱気を帯びたものになっている。

彼は亡命後再び『プラハの春音楽祭』の指揮台に立つことはなかった。

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classicalmusic at 14:31コメント(0)スメタナ | アンチェル 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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