2018年01月24日

シンプルでストレートな解釈、ヘブラー第1回目のソナタ全曲集


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イングリット・ヘブラーはこれまでに2回に亘ってモーツァルトのピアノ・ソナタ全曲のセッション録音を果たしていて、こちらはその第1回目になり1963年から67年にかけてのフィリップス音源が収録されている。

ただし収録曲目は17曲のソロ・ソナタのみで、2台のピアノのためのソナタや幻想曲などは加えられていない。

いずれも彼女のモーツァルトのスペシャリストとしての評価が決定的になった30代後半から40代前半のストレートな解釈の中での可憐で精緻な表現が特徴で、それがほぼ20年後の2回目の、より自在で微妙な変化を伴った恰幅の良い演奏と異なっている点だ。

モーツァルトへの愛を他のいかなる盤よりも深く感じさせる点で、このヘブラーのディスクは忘れ難い。

旧全集録音をここに挙げたが、これは長らく筆者の愛聴盤であったためでもある。

各ソナタに真摯に対峙し、慈しむように奏し、虚飾も衒いもない美しく温かみ豊かな世界に仕上げている。

いずれにしてもヘブラーは当初から作品を恣意的に扱うことを常に避けていて、尊大になることもなく作曲家の音楽構想の律儀な再現に腐心しているように思える。

後期の規模の大きなソナタでもむやみにスケール感を強調することなく、洗練されたテクニックで細やかな情緒を溢れさせた演奏が冴え渡っている。

またウィーンとパリで研鑽を積んだ彼女だけあって、硬直したところは少しもなく仄かな洒落っ気やウィットも欠いていない。

作品愛から発せられるタッチのぬくもりやまろやかさもじっくりと味わいたい。

同時代のウィーンのピアニスト、グルダ、デムスやバドゥーラ=スコダなどと比べると彼女の演奏は革新的ではないが、伝統に根ざしたモーツァルト奏法の継承者という感じがする。

彼女のアプローチの根底には非常に几帳面さと没我的な姿勢があり、そのため一種地味な外観を与えるが、深く耳を傾けると文字通りとりこになってしまうようなある種絶対的な魅力が備わっている。

とかく個性豊かな演奏が求められる時代にあって、ヘブラーのようなあらゆる無駄を省いたシンプルなモーツァルトが後世に受け継がれることを期待したい。

現今のより個性的な演奏や高い鮮度の解釈への歴史的布石の一つとしても重要だろう。

先に推薦した同ピアニストによるバッハのフランス組曲と同様、タワーレコード・ヴィンテージ・コレクション・シリーズとしての復活で、限定生産ながらこれらの名演を気軽にコレクションできるようになったのは大歓迎だ。

ライナー・ノーツにリマスタリングの表示は見当たらないが、音質は極めて良好でかつてのフィリップス特有のシャープなキレと共にピアノの音色に潤いが甦っているのが秀逸。

クラムシェル式のカートン・ボックス入りで、23ページほどのライナー・ノーツには収録曲目及びトラック・リストの他に1曲ごとに簡易な曲目解説も掲載されている。

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classicalmusic at 14:14コメント(0)モーツァルト | ヘブラー 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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