2018年01月26日
フルトヴェングラー、ウィーン・フィルによる序曲集、プラガからのSACD盤
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プラガ・ディジタルスからのフルトヴェングラーSACDハイブリッド・シリーズの1枚になるこの序曲集は、これまでにSACD化されたディスクの中では音源の保存状態に恵まれ、リマスタリングも良好で、オーケストラの音響に磨きがかかってある程度の臨場感も確保されている。
1950年代のウィーン・フィルのサウンドが比較的忠実に再現された成功例と言えるだろう。
ただしより古い録音の『ラコッツィ行進曲』と『フィンガルの洞窟』の2曲では総奏部分でテープの収容能力の限界のためか、あるいは経年劣化か定かではないが、音が平面状に潰れるように聞こえる現象も起きている。
また音場の拡がりからすると擬似ステレオ音源が使われている曲も多いが、幸い不自然さは感じられない。
以前のCD化の時に乾涸びたように聞こえた音質が、ここではより潤って高度な鑑賞にも充分堪え得る状態にグレード・アップされたことは評価できる。
フルトヴェングラーの序曲集の鑑賞は劇場感覚で捉える必要があるだろう。
メンデルスゾーンの『フィンガルの洞窟』を除いて他の総てがオペラを中心とする舞台作品のオープニングやその間奏曲としての機能を果たしているので勿論単独で聴いても興味深いが、その作品全体が上演される劇場空間の中で初めて本来の効果を発揮することを考慮しなければならない。
それ故個々に聴いていると、時としていくらかあざといと思われる表現が無きにしも非ずだが、フルトヴェングラーはその時その場にいた人を劇中に巧みに誘導する並外れた手腕を持っていた指揮者でもあるので、これも彼の音楽的ストラテジーと考えられる。
いずれもこの巨匠の芸格の高さがはっきり示された見事な演奏ばかりだが、ウェーバーとグルックの『アルチェステ』序曲の演奏が傑出している。
ことにドイツ的でロマンティックな美しさに溢れた『魔弾の射手』と『オベロン』は、それぞれの曲の持ち味を余すところなく表出した演出のうまさとその格調の高い表現に強く惹かれる。
また巧みな筆致で鮮やかに描き上げた『フィンガルの洞窟』、全曲盤から採った『レオノーレ』第3番もスケール雄大、『ロザムンデ』序曲はやや重苦しいが、いかにもフルトヴェングラーらしい。
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