2018年02月06日
カップリングに気を利かせて欲しかったモーツァルト変奏曲集
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イングリット・ヘブラー(1926-)はモーツァルトのピアノ・ソロのための変奏曲を都合14曲録音している。
それらはユニヴァーサル・コリアからのボックス・セットに総て収録されているが、個別売りCDでも過去3集に分けてリリースされた。
そのうち現行盤はタワー・レコードとユニヴァーサル・ジャパンからの1枚ずつだが、このディスクは後者に当たる。
ただレーベルも企画も異なっているためか曲目にだぶりがあり、しかもこちらには録音状態の不釣合いなアルトゥール・バルサムの古い演奏が2曲カップリングされている。
それ故ヘブラーの演奏はだぶっているパイジェッロの主題による6つの変奏曲を入れても、事実上5曲だけになる。
できれば演奏者をヘブラーだけに統一して収録曲数を増やして欲しかった。
モーツァルトの作品の中で、ピアノ曲の占める割合というのは大変大きく、彼自身がピアノの名手であったことを思えば当然のことであろう。
鍵盤楽器用の変奏曲には多分に即興的な要素があり主題が自作のものであれ、また他の作品からのものであれテーマを様々に展開させていく作曲家の能力と閃きが問われるが、モーツァルトはこのジャンルでもその卓越した手腕を示している。
実際グルックの主題による10の変奏曲のように彼が即興演奏したものを後に書き留めた作品も存在する。
随所にパッセージやカデンツァ風の走句を挟んで幻想曲風に展開されるK.398、個性的な変奏が繰り広げられる円熟したK.455、由来不明の短い主題による愛らしいK.500、広く愛奏されているK.573、ピアノ曲の最後を飾った晩年のK.613。
これらは、一見アマチュアにも弾けるような書き方がされているが、その何でもないようなスタイルの陰に卓越した芸術性が隠されていることを忘れてはならない。
ひとつのテーマから溢れ出て尽きることのない流暢なヴァリエーションを飾り気なく、しかし飛びっきりエレガントに表現したのがヘブラーの演奏である。
彼女はことさらテクニックを誇示することもなく、それぞれの作品の特徴を丁寧に描きながら、モーツァルトの天衣無縫な才能を一番美しくかつ自然な形で聴かせてくれる。
ウィーン風のまろやかな、ニュアンスが豊かな表現で、聴き手を魅了せずにはおかない。
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