2018年02月12日
ヴァイオリン・ソナタ以外はデュ・プレのコンプリート・レコーディングスと重複
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EMIバジェット・ボックス・シリーズのリニューアル限定盤で、この9枚のCDにはピンカス・ズーカーマンのヴァイオリン、ジャクリーヌ・デュ・プレのチェロ、そしてダニエル・バレンボイムのピアノの3人によるベートーヴェンの10曲のピアノ三重奏曲、5曲のチェロ・ソナタと3曲のヴァリエーション、更に10曲のヴァイオリン・ソナタ及び同メンバーでのチャイコフスキーのピアノ三重奏曲イ短調が収められている。
このうちチェロ・ソナタは1970年のエディンバラ音楽祭、またチャイコフスキーは72年のテル・アヴィヴのそれぞれライヴから採られたもので、後者はモノラル録音だが音質は決して悪くない。
ただしズーカーマンのヴァイオリン・ソナタ全曲以外は以前リリースされたデュ・プレのコンプリート・レコーディングス・セットに総て入っているので既にお持ちの方は注意されたい。
バレンボイムと夭逝した天才チェリスト、デュ・プレ夫妻の見事な呼吸とズーカーマンのアンサンブルが精緻で充実した音楽を創った隠れた名盤だ。
3人とも1940年代の生まれだから、録音当時は一番年上のバレンボイムでもようやく30歳になろうという若さだった。
それだけに彼らの演奏には特有の覇気が漲っていて、溌剌とした中にも和気あいあいの雰囲気でベートーヴェンの音楽に取り組んでいる初々しさが感じられる。
その傾向はチェロ・ソナタの方により顕著だが、ピアノ三重奏でのアンサンブルは若さがぶつかり合うような激しいものではなく、かなり抑制を効かせた調和を保っているのも特徴的だ。
一方1971年から73年にかけてのセッションになるズーカーマンの弾くヴァイオリン・ソナタでは後年の彼にみられる内向的な表現ではなく、美しい音色を充分にアピールした瑞々しい演奏を聴くことができる。
バレンボイムの伴奏も積極的で、ベートーヴェンが書き記したピアノ・パートの多様性を巧みに表現していて秀逸。
特に『クロイツェル』冒頭の堂々たる押し出しのよさとズーカーマンとの絶妙なやりとりも聴き所のひとつだ。
1971年の暮れ、半年間の休養を終えてスタジオに戻ってきたデュ・プレは、夫バレンボイムと共に長年の懸案だったベートーヴェンのチェロ・ソナタを録音するべく、手始めに第1番の第1楽章を録音した。
しかしそれは完成されることなく、彼女がチェリストとしてスタジオに姿を見せた最後のセッションとなった。
彼女が演奏不能となったとき、英EMIはBBCから1970年のエディンバラ音楽祭におけるライヴ・テープを借り受け、彼女への感謝も込めてリリースしたのである。
ライヴゆえに小さなキズやノイズもあるが、皮肉にもこの録音が陽の目を見たことで、私たちはデュ・プレの音楽性がどれほど自由なものかを確認できるのである。
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