2018年02月14日
リヒテル唯一の音源、ベートーヴェンの『大公』とピアノ五重奏曲
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Richter The Masterシリーズの第4巻目にあたり、2枚のCDにベートーヴェンの2曲のソナタ、2曲のロンド、そしてピアノ三重奏曲『大公』及び『ピアノと木管楽器のための五重奏曲』が収録されている。
とりわけ2枚目の2つのアンサンブルはフィリップスが持つリヒテル唯一のライヴ音源で、しかもこのシリーズはリミテッド・エディションで既に製造中止になっている。
そのために幻の名演としてセカンドハンドでも法外なプレミアムが付いてしまっている。
同シリーズの他のセットはまだ手に入るだけに残念だ。
『大公』は彼が他の曲でも協演したボロディン四重奏団のメンバーとの演奏になるが、何故かこの曲はその後セッションで採り直すことがなかったようだ。
一方ピアノ五重奏曲は曲自体が滅多に演奏されないということもあって、更にこのCDに付加価値を加えているが、こちらではパリを中心に活動している当時としては新進気鋭のモラゲス木管五重奏団が協演している。
どちらも1992年12月にモスクワのプーシュキン・ミュージアムで行われたコンサートからの録音のようだ。
『大公』ではボロディンの2人がいつになく古典的な均整の取れたアンサンブルを聴かせていて、リヒテルの気品に満ちたピアニズムとバランス良く調和している。
シューベルトの『鱒』ではいくらか癖のあるロマンティックな表現が気になったが、ここではポルタメントなどは最低限に抑えられているのが好ましい。
特に第3楽章のヴァリエーションでの変化に富んだリリカルな表現は秀逸だ。
『ピアノ五重奏曲』はモラゲスの管楽器奏者達の精緻な合わせ技が素晴らしいが、それは彼らの個人的な技術水準の高さも証明している。
実際第2楽章でオーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルンのそれぞれが披露する節度をわきまえたカンタービレは白眉だ。
また晩年のリヒテル特有の包容力のあるピアノが、伴奏に回った時にも注意深くソロを引き立てているのも流石だ。
尚1枚目のCDに収められているピアノ・ソナタ第18番及び第28番と2曲のロンドはリヒテルの音源が他にもあり入手することも可能だが、このライヴは第18番が1992年、その他が1986年のアムステルダム・コンセルトヘボウでのコンサートから録音されたもののようだ。
ライナー・ノーツは17ページほどで英、仏、独語の簡易なエピソードが掲載されているが、このライヴの経緯については全く触れておらず、録音データに関しても信用できるものではないことも付け加えておく。
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