2018年02月20日
鮮やかに甦ったコンヴィチュニー、チェコ・フィルによる『ザ・グレイト』
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20世紀中葉を代表する巨匠の一人として今なお高い評価を得ているフランツ・コンヴィチュニー(1901-1962)がチェコ・フィルハーモニーに客演した貴重なステレオ音源を昨年UHQCD化によってリニューアルした1枚。
収録曲はシューベルトの交響曲第9番ハ長調『ザ・グレイト』とワーグナーの歌劇『タンホイザー』序曲だが、特にシューベルトの録音状態が秀逸で、今回のUHQCD化によって更に鮮明な音質と臨場感が得られている。
楽器の定位も明確で、低音から高音までのバランスも見事だ。
収録年は1962年なので彼の最後のセッションのひとつとしても、これだけの優れた音源が残されていることは幸いというほかはないが、当時のチェコ・スプラフォンのレコーディングに懸けたエンジニア達の意気込みをも伝えている。
ワーグナーの方は1960年の録音ということもあって、音質でやや劣っていることは否めない。
こちらも歴としたステレオ録音だが総奏部分になると高音の鮮明さ、低音部の迫力や分離状態もシューベルトに比べるといまひとつという印象だ。
どちらも一点の曇りもない平明で重心の低い解釈はコンヴィチュニーらしいが、揺るぎない造形、スケールの大きさ、味わいの深さなどはまさにこの巨匠ならでは。
シューベルトのこの長大な交響曲を演奏するのに、コンヴィチュニーは、いささかの苦心のあともとどめていない。
ごくふつうにあたりまえのことのように演奏しているのだが、演奏が決して平板に流れず、むしろ、曲に一種の雄大な趣きさえ添えているのは、まったく驚くべきことで、このような指揮者は、ほんとうに、音楽の魔術師のようなものである。
彼に従うオーケストラのアンサンブルも非常に巧妙で、それぞれのメンバーの音楽的水準の高さも証明されている。
この頃のチェコ・フィルはアンチェルが首席で、オーケストラをここまで鍛え上げた彼の功績でもあるだろうが、既にヨーロッパの第一線に立つ楽団に成長していたことが理解できる。
コンヴィチュニーはドイツ系だがモラヴィア生まれの指揮者で、その意味ではチェコ・フィルとの共演が意外に少ない。
やはり昨年リリースされた英スクリベンダムからの20枚組のセットには、かろうじてブルックナーの第4番1曲が1952年のモノラル録音で加わっているだけで、現行のCDを見ても他にはベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲をスークのソロで録音したスプラフォン盤があるくらいだ。
勿論コンヴィチュニーは1949年以降終生ライプツィヒ・ゲヴァントハウスのカペルマイスターであり、またシュターツカペレ・ドレスデンの首席も兼ねていたので、録音活動では圧倒的にこのふたつのオーケストラが占めているが、チェコ・フィルとの共演はそれらに優るとも劣らない魅力があることは明らかだ。
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