2018年02月26日

アンチェル、チェコ・フィルによる人類愛的ショスタコーヴィチ


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このディスクは演奏水準と録音状態で既に高い評価を受けていたものだが、今回のUHQCD化によってその価値を更に高める結果になっている。

また前回のコロムビアからの日本盤では交響曲第5番と祝典序曲のカップリングだったのが、同じメンバーによる交響曲第1番との2曲に入れ替わり、より充実した選曲になったことも評価できる。

肝心の音質だが確実に向上していることが聴き取れる。

より古い1961年録音の第5番は64年の第1番に比べても遜色のない、透明感のある鮮明なサウンドと奥行きを感じさせる音場が得られ、終楽章コーダのティンパニの打ち込みも鮮やかに再生されるし、第1番のソロ楽器の独立性が保たれたカラフルなアンサンブルが印象に残る。

源音をCD化する時に必然的に起こる音質の劣化を最小限に食い止める手段として、個人的には肯定的に受け止めている。

ショスタコーヴィチの交響曲については、とかくこれらの曲の成り立ちに関するエピソードや当時のソヴィエトの社会情勢に対する作曲家の複雑な心境などが云々されて、聴き手もそうした暗澹たる状況を演奏の中に探しがちだ。

アンチェルの演奏にはそのような作品にまつわる澱のようなものを完全に濾過した解釈があり、純粋にスコアに書き記された音楽だけから引き出される音響力学によって再現する姿勢は終生変わらなかった。

それが作品に普遍的な価値を与えているのだろう。

アンチェル自身の強制収容所での悲惨な経験は、活かされているとすればそれは人類愛に向けられていて、彼の演奏を高踏的にしているのだと思わざるを得ない。

第5番は全体にゆとりのあるテンポで作品の悲劇性を素朴に表現しており、そこに西欧やアメリカとは異なるスラヴ的気質が表されているようだ。

アンチェルの演奏には技術的にデリケートな側面とおおらかな気分が同居しているのが興味深い。

終楽章を雄大に表出してクライマックスを盛り上げているのは現代の先駆を成す演奏だ。

チェコ・フィルのオーケストラとしての実力が遺憾なく示されているのもこのCDの特徴で、アンチェルの指揮に敏感に呼応する全体の機動力と結束にも驚かされる。

アンサンブル交響曲とも呼びたくなる第1番の様々な楽器によるソロの大活躍と一糸乱れぬ合わせの巧さも聴きどころだ。

ここにはアンチェル首席時代に迎えたチェコ・フィル第二の黄金期の面目躍如の演奏が記録されている。

彼らはドヴォルザークからスーク、マルティヌーやヤナーチェクに至るチェコの作曲家の作品の演奏では他の追随を許さないが、この2曲のショスタコーヴィチではロシア物との相性もすこぶる良いことを示している。

勿論スラヴ系以外でもモーツァルトに代表される古典から現代音楽のジャンルにおいても活躍が期待できるオーケストラだ。

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classicalmusic at 13:47コメント(0)ショスタコーヴィチ | アンチェル 

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Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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