2018年03月14日
リヒテルの味わい深いショパン、リスト作品集
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きめ細かなリリシズムの表現とピアニスティックなテクニックが理想的に統合され、リヒテル円熟期特有の内省的な深みも加わった練達の技が聴き所だ。
セッションには慎重だった彼の性格から、この2枚のCDも総てライヴ録音によって構成されているが、またそれがリヒテルの音楽を鑑賞する上でのひとつの醍醐味になるだろう。
何故なら彼は演奏の一回性を重んじていた。
彼の音楽性をセッションという形で固定されるのには抵抗があったに違いない。
これはグールドのポリシーとは好対照をなしていて興味深いものだ。
彼の幅広いレパートリーの中でもとりわけショパンは最も多く演奏の機会に恵まれた作曲家で、それだけに彼の経験と熟慮された音楽観が遺憾なく発揮されている。
ただし彼はある曲集の全曲演奏という形でのパフォーマンスを嫌って自分の好みに合わせて抜粋してプログラムを組んだ。
このCDでも『前奏曲集』は10曲のみで、リヒテルの他の録音をみても例えば『エチュード』の全曲録音も存在しない。殆んど唯一の例外としてバッハの『平均律』があるくらいだ。
相変わらず録音データの表示に誤りがあるのはこのザ・マスター・シリーズの小さな欠点だ。
それはリヒテルの膨大なライヴからの蒐集であるために、編集者の混乱をきたしているのかも知れない。
ライナー・ノーツの最後に1988年の録音と記載されているが、2枚のCDの音質に若干のばらつきがあり、調べてみるとこのCDに収められている総ての曲はフィリップスが著作権を持っているライヴ音源だが、年代も録音場所も異なる少なくとも四つのマスターが使われていることが分かった。
まずショパンの『24の前奏曲集』から10曲の抜粋、『舟歌』及び『ノクターン第4番』は1966年11月19日のイタリア、フェッラーラにおいて、『幻想ポロネーズ』は92年10月28日のオランダ、ナイメヘンでのそれぞれライヴから採られている。
一方リストの『ソナタ』は196611月21日イタリア、リヴォルノでの演奏、そしてCD2枚目のリストのプログラムは記載どおり88年3月10日ドイツ、ケルンでのライヴということになる。
音質はいずれも良好で鑑賞に全く不都合はない。
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