2018年03月26日

マルティノンのレア音源、パリ・ライヴからのベートーヴェン4曲


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ジャン・マルティノン(1910-76年)はシカゴ交響楽団の音楽監督を辞任した後、故郷に戻ってからもフランス国立放送管弦楽団の首席指揮者としてコンサート、録音に精力的な活動を続け、その成果として仏EMIにかなりの量の音源を遺すことになる。

ライナー・ノーツによればこのCDに収録されたプログラムは1970年3月11日にパリのシャンゼリゼ劇場で行われたライヴで、ベートーヴェン生誕200周年記念演奏会の一晩からピックアップされたもののようだ。

オン・マイクで捉えられた録音状態は劇場のややデッドな音響も相俟って鮮明で、この時代のライヴとしては臨場感にも不足しない極めて良好なステレオ録音だと思う。

拍手も盛大に入っているが、幸い演奏中の客席からの雑音はごく僅かで鑑賞に全く不都合はない。

マルティノンのレパートリーとしては入手困難だった音源で、特に前半の2曲に彼の実力が発揮されている。

『大フーガ』はベートーヴェンが当初弦楽四重奏曲Op.130の終楽章として作曲したものだが、741小節という破格に不釣合いな長さと受け入れ難い難解さから、出版時により短い曲に挿げ替えを余儀なくされた。

その後も耳の聞こえなくなったベートーヴェンが頭の中で捻り出した音楽のように考えられてきた。

実際には彼が古いフーガの作法を野心的に模索して未来にも通用する音楽語法としてリニューアルしてみせたサンプルと言えるだろう。

個々で演奏されているのはフェリックス・ワインガルトナーがコントラバスを加えて弦楽合奏用にアレンジしたもので、彼はまたピアノ・ソナタ第29番『ハンマークラヴィーア』もオーケストラ版に編曲している。

作曲家でもあったマルティノンは込み入った対位法の声部を明快に描き分けながら、中間部では静謐な清澄さを引き出して晩年のベートーヴェンの心境をも感知させ、この作品の内部に潜む豊かな曲想を再現している。

曲の構造と長さに負けないだけのしっかりしたオーガナイズと統率力が冴え渡った演奏だ。

三重協奏曲ハ長調は個性的なフランスのソリスト3人が協演しているところに面白みがある。

中でもフェラスとハイドシェックは異なった音楽性を持っていて、それに箍を嵌めるようにして纏めているのがマルティノンだが、全体的には流麗で軽快な演奏に仕上がっている。

トルトゥリエとハイドシェックはこの曲にはっきりした輪郭を与えているが、細部を聴いていると終楽章でフェラスが拍から逸脱しそうになったり、ライヴならではのスリルもある。

フランス国立放送管弦楽団は暖色系で柔軟な表現を得意とする典型的なフランスのオーケストラだが、ベートーヴェンの作品でもそうした長所が活かされて違和感はない。

最後の2曲はヴァイオリンのためのふたつのロマンスを、フェラスがオリジナルのオーケストラ伴奏で弾いたものだ。

いくらか線が細く透明感のあるしなやかな音色が如何にも彼らしいが端正な演奏ではなく、ヘ長調の中間部で不意にアッチェレランドをかけて、マルティノンが取り繕う場面も聴き取ることができる。

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classicalmusic at 00:34コメント(0)ベートーヴェン | マルティノン 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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