2018年03月30日
リヒテル、バッハとショパンのライヴ集
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巨匠リヒテルのバッハとショパンをカップリングしたアルバムで、それぞれCD1枚ずつを当てている。
このシリーズでは彼のレパートリーの中核をなす作曲家として、更に第8巻の2枚がバッハ、第10巻のほぼ1枚分がショパンの作品集としてまとめられている。
リヒテルのバッハは彼の開拓したあらゆるテクニックを縦横に駆使して仕上げたという印象だが、常に洗練された音楽性で勝負するという点ではかなり正攻法で、決して奇を衒った表現ではない。
このあたりに彼のバッハ演奏に対するポリシーが窺われる。
『イタリア協奏曲』の楽章ごとの明快な描き分け、例えば第2楽章での通奏低音の上に奏でられる旋律の感性豊かなカンタービレと、それを挟む急速楽章の見事なシンメトリーは、この曲の簡潔な様式の美しさを良く伝えている。
『フランス風序曲』では、序曲の部分を総て楽譜の指示通りに繰り返して演奏する徹底した原曲への敬意が払われているし、またそれに続く舞曲の性格も極めて多彩なプロフィールを持っている。
2枚目のショパンでは『エチュード』作品10から8曲、同作品25から6曲が選ばれている。
リヒテルは『エチュード』全曲をライヴでもセッションでも弾いたことがなかったし、またその意志も持っていなかったようだ。
ここに収録された曲は、彼が特に好んでいたものを演奏効果も考慮に入れてセレクトして配列したと思われる。
勿論ライヴで演奏するにはかなり緊張せざるを得ない難曲揃いで、既にテクニックが衰え始めた晩年の彼だが果敢にも挑戦している潔さと、その集中力や余裕さえ感じさせる表現が素晴らしい。
中でも「木枯らし」は、彼のキャリアを映像で綴ったDVD『エニグマ』でも動画で鑑賞することが可能だ。
その他の2曲の『ポロネーズ』嬰ハ短調及びハ短調ではダイナミクスの幅広さと表現の巧みさ、深みのある抒情などで他のピアニストには真似のできない境地に達した巨匠の至芸を味わうことができる。
総てフィリップスの音源で、録音データに関してはCD1の『イタリア協奏曲』と『4つのデュエット』が1991年11月8日にノイマークトで、『フランス風序曲』は同年3月7日及び10日にローランドゼックでのライヴ、CD2の『エチュード』集が88年2月28日にザールブリュッケンにて、『ポロネーズ』はどちらも92年10月28日にオランダのナイメーヘンで催されたコンサートから採られている。
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