2018年04月05日
リヒテルの『ディアベリ』、生命力に漲る桁違いのスケール
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このSACDにはリヒテルのプラハ・ライヴから1965年の6月2日に演奏されたベートーヴェンのピアノ・ソナタ第31番変イ長調Op.110及び86年5月18日の同『ディアベリの主題による33の変奏曲ハ長調』Op.120の2曲が収録されている。
特に後者はリヒテル晩年のライヴにも拘らず突き進むような覇気と、泰然自若としたスケールの大きさに驚かされる。
ベートーヴェン特有の音楽を構築していくような堅牢さと、哲学的な深みを同時に表現し得た稀有な演奏として多くの人に鑑賞して欲しいライヴだ。
それぞれのヴァリエーションもリヒテルの創造力のオリジナリティーに貫かれていて説得力に充ちている。
例えば第1変奏の思い切りテンポを落とした生命力に漲るマーチは、あたかも巨人の足取りのようでこの大曲の始まりに威厳を与えているし、第32変奏のフーガの力強さは壮大なクライマックスを形成するのに相応しい。
そして通常は長大な曲を名残惜しむように静かに演奏される終曲のテンポ・ディ・メヌエットでは、意表を衝くように颯爽と足早に締めくくっていて、もったいぶらない潔い解釈も彼らしい。
まさに会場にいるような臨場感、物凄い推進力で、約50分の大曲を一気に聴かせてしまう魔力、リヒテルの凄さを再認識させてくれる。
参考までにリヒテルの『ディアベリ』は同年の翌月に行ったアムステルダム・コンセルトヘボウ・ライヴもレジス・レーベル他からリリースされている。
プラハ・デジタルスのリミテッド・エディション・シリーズの1枚で、この他に既にリヒテルのライヴだけでもシューベルトのピアノ・ソナタ集、ショパンのバラード集、そしてラフマニノフやグリーグの協奏曲など4枚が出揃っている。
総ての録音にDSDリマスタリングが施されていて音質的にもかなり向上しているが、このSACDではソナタの方は音源が古いだけに、いくらかマスター・テープの劣化が聞き取れる。
それに比較して『ディアベリ』は極めて良好で、SACD化により会場のノイズまでがますますリアルになり、リヒテルのほんのわずかなニュアンスの変化さえ伝わってくる。
10ページほどのライナー・ノーツには英、仏語での簡単な楽曲解説とリヒテルの略歴が掲載されている。
尚ハイブリッド仕様なので互換機がなくても再生可能。
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