2018年04月19日

1960年代初期のケンプ、汲めども尽きない味わい深さ


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ヴィルヘルム・ケンプの演奏によるこのモーツァルト作品集は1960年から62年にかけて録音されたもので、60代後半にさしかかった彼の押しも押されもしない円熟期の至芸を極めて良好な音質で堪能できる1枚だ。

ピアノ協奏曲第8番ハ長調は、フェルディナント・ライトナー指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との協演になるが、第24番ハ短調に関してはバンベルク交響楽団の記載はあるが指揮者の名前がクレジットされていない。

ライナー・ノーツによれば急速楽章のカデンツァがいずれもケンプ自身の手になるものなので、彼の弾き振りなのかも知れない。

その他に2曲のピアノ・ソロのための作品、ピアノ・ソナタ第11番イ長調『トルコ行進曲付』及びファンタジアニ短調が収録されている。

いずれも保存状態の良いステレオ録音で、チェコ・プラガ独自のリマスタリングによって潤いのある瑞々しいサウンドが蘇っている。

筆者がケンプの演奏をコンサートで聴いたのは彼が最晩年に来日していた頃のことなので、その実力はある程度想像力で補わなければならなかった。

それでも小品で聴かせる気の利いた解釈と心温まるリリシズムについては他のピアニストには真似のできない、孤高の美しさを表現し得ていたことが忘れられない。

このアルバムでも良く聴いていると彼が如何に注意深くそれぞれの声部の音量をコントロールし、非常に高い音楽性を披露していたかが理解できる。

それはまた彼の作曲家としてのオーケストレーションを髣髴とさせるテクニックにも繋がっているだろう。

このCDでもそれぞれの曲の随所に現れる、これ以上省略できないほどシンプルだが汲めども尽きない味わい深さにケンプの美学が究極的に示されているのではないだろうか。

丁寧なタッチで軽やかになめらかに奏でられる極上のモーツァルトで、春の日差しのように暖かくほのぼのとした演奏が魅力的だ。

ケンプの音楽性のなかには、ドイツ音楽のよさとでも形容すべきものが脈々と生きているようである。

決してテクニシャンではないのだけれど、その表現するところは大地にしっかりと足をつけており、深く、常に味わい深い。

テクニック万能と言えるような今日にあって、なお多くのファンから愛聴、支持されている理由は、多分、そのあたりにあるのだろう。

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classicalmusic at 00:27コメント(0)モーツァルト | ケンプ 

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Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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